第33章 新生活
千寿郎は涙を手の甲で拭いながら、泰葉の目を真っ直ぐ見る。
千「僕は、沢山の事を学びたいと思います。
そして、また新しい事を発見していきたい!
自分を情けないと思うのをやめます!」
千寿郎の目には、何か熱い希望の光が灯ったようだった。
「うん!それで良いと思う!
私も全力で応援するわ!」
千「僕、炎柱の書を解読して、炭治郎さんにお伝えします!」
すると、部屋の前に人の気配がした。
スッと襖が開いて槇寿郎が顔を出す。
槇「千寿郎、風呂が空いたぞ。入りなさい。」
千「あ、はい!…では、泰葉さん、ありがとうございました!」
そう言って、湯浴みの用意をして千寿郎は出ていった。
泰葉も離れへと向かおうと腰を上げる。
槇「…泰葉さん。ありがとう。」
「聞いてらしたんですね。」
槇「あぁ。俺たちも同じことを思っていたが、この家のものが言うと千寿郎を責めてしまう。
だから、泰葉さんに言ってもらえて、千寿郎も心が晴れただろう。」
泰葉はふっと微笑んだ。
「私の気持ちを伝えただけです。
煉獄家の歴史があるでしょうに、私が知ったように言っているのはお許しください。」
「それに…
以前、杏寿郎さんもおっしゃっていたのです。
あれは、遺言のつもりだったと思いますが。」
無限列車の日、炭治郎に託した言葉の中に
『自分の心のまま
正しいと思う道を進むように伝えて欲しい。』
そう言っていた。
槇寿郎は目を細める。
「槇寿郎様にはお身体を大切にしてほしいという願いでしたよ。
今、こうしてお元気になって、杏寿郎さんも願いが叶いましたね。」
泰葉がニコッと笑う。
槇寿郎はふっと吹き出した。
槇「まったく、泰葉さんが居てくれなければ、死ぬ間際だったのだろう?
そんな中、人の身体の心配をしている場合ではないだろうに。」
「優しい御子息達で羨ましいですね。」
槇寿郎は「あぁ。」と微笑んで泰葉の頭をくしゃっと撫でた。そして、暖かくして眠るようにと言い残し、自室へと戻っていく。泰葉も、おやすみなさいと告げて離れへと向かった。