第33章 新生活
杏寿郎はふわりと泰葉を抱きしめる。
杏「泰葉さんは嫌か?
俺はこうして泰葉さんを感じていたい。
許されるなら、もっと深く。」
耳元で囁かれる声は、普段の杏寿郎からは想像できないほど優しく、そして甘かった。
泰葉はぞくぞくっと身体が震えた。嫌な震えでは無い。
どこか、この言葉の意味を期待しているように。
「もうっ、そんな冗談を言って。」
泰葉はそんな自分への照れ隠しで、杏寿郎を冗談と遇らう。
すると、泰葉を抱く力が少し強まった。
杏「言っただろう。煉獄家は正直な性分なんだと。
冗談に聞こえるのか?それとも、俺が年下だから子供だと?」
そんなはずない。
年下と言っても20歳。
それに、こんなに色気を纏い甘い言葉を囁く子供がいるだろうか。
「…そんな事思ってない。
ちょっと恥ずかしかったの。
こんな風に言われるの初めてだったから。
好きな人に言われるのって、こんな気持ちなのね。
心臓がドキドキうるさいの。」
俯き、赤い顔で杏寿郎に想いを伝えると、ふっと杏寿郎は笑う。
杏「では、その心臓の音を今度俺にも聞かせてもらえるか?
俺と同じだと思う。君にも確認して欲しい。」
泰葉はコクリと頷いた。
「で、でも、今度ね!今は心の準備もしてないし…!」
杏「あぁ!しかし、その前にやらねばならぬ事があるな!
泰葉さんの両親に、報告をしていない!
文を出して許可をいただこう!」
本当はご挨拶に赴かなくてはならないのだがな…と杏寿郎は眉を下げる。
そんな杏寿郎に首を振った。
「両親は遠くにいるし、今は大事な決戦前。
私の両親もわかってくれる。
全てが落ち着いたら、一緒に両親のところへ行ってくれる?」
杏「あぁ!もちろんだ!」
杏寿郎はニコッと笑い、早速文を出そうと自室へと向かった。
泰葉も千寿郎の手伝いをしに、台所へと向かった。