第32章 報告と離れ
杏寿郎は、はははと笑う。
杏「千寿郎、そんなふうにしなくていい。別に今まで通りにしていても大丈夫だ。」
杏寿郎は千寿郎の頭をワシワシと撫でた。
槇「泰葉さん、よく決断してくれたな。
実は杏寿郎もだろうが、俺も千寿郎も泰葉さんが危険な目に遭うのが気になってな…。
君の周りには信用できる人が大勢いるのは分かっているが、目の届く所に置きたくなってしまった。
勝手なことをしてすまない。」
「いえ、気にかけていただきありがとうございます。」
泰葉はにこりと笑って返す。
槇「男3人と完全に同じ家にいるのは何かと気を使うだろう。
道場を挟んで離れがある。
あそこには厠も風呂もあるから、自分の家のように使いなさい。
食事は、みんなで食べよう。
その方が良いだろう。」
そうして、杏寿郎に案内され離れへと向かった。
道場で見えなかったが、挟んでまた建物があった。
離れ…と言っても、一般人が住む一軒家と変わらない建物。
なんなら、今まで住んでいたところより広いのではないだろうか。
杏「さ、ここが泰葉さんの住む家となる!」
「ここ…を、一人で住んでいいと?」
泰葉は言葉を失う。
煉獄家は広いと思っていたが、全部合わせたらどのくらいの広さなのだろうか…。
杏「週に一度は、千寿郎が掃除しているから、問題ないと思うぞ!」
そう言って、杏寿郎は鍵を開ける。
「こんな立派なところ…!
申し訳ないから、母屋の一室を…」
と、泰葉が言っていると、ふわりと後ろから抱きしめられる。
杏「泰葉さんが、ここにいてくれれば家の中でもこうして堂々と抱きしめることができる。
それに、君が一人じゃ広すぎると言うなら俺も住うが…?」
耳元でこんな甘い言葉を言われて、赤面しない方がおかしい。
泰葉の顔はもちろん、耳まで真っ赤である。
杏寿郎はそんな泰葉の様子にくすりと笑った。