第32章 報告と離れ
翌日、朝食を済ませて煉獄家3人は道場で打ち込みをしていた。
槇寿郎も段々と体力が戻ってきており、杏寿郎といい勝負をする程までになっていた。
千寿郎もこの鍛錬について行く。
その時、煉獄家門をくぐる女性。
泰葉だった。
玄関の前に立ち、ごめんくださいと声をかける。
しかし、無反応。
玄関に手をかけると、鍵がかかっている。
「お出かけされているのかしら…?」
仕方なく帰ろうとした時、
バシーン!!という音が鳴り響く。
その音はどうやら道場から聞こえてくるので、
泰葉は向かってみることにした。
道場の扉をそっと開けて、中を覗くと同じ顔が大中小と並んで素振りをしている。皆、髪を一つに纏めて汗を流している。
やはり、一際目を引くのは杏寿郎。
この姿を見て惚れない女性はいないだろうなぁ…とどこか他人事のように見ていた。
それにしてもいつ声をかけようか。
後でまた出直した方が良いかと、静かに扉を閉めようとすると…
杏「帰るのか⁉︎入ってくれば良いだろう!!」
と声をかけられた。
見つかっているとは思わずビクッと肩を震わせる。
「す、すみません!いつ声をかけたら良いのか分からず…。」
おずおずと扉を開けて、中に入って行く。
千「泰葉さん!いらっしゃってたのですね!
すみません、全員こちらにいたので鍵を閉めていたのです。」
やはりしっかり者の千寿郎だ。
槇「泰葉さん、久方ぶりだな。」
「はい、ご無沙汰しております。」
ふわりと笑う泰葉に慣れてはきたというものの、やはり心が浮き立つ感じを覚える煉獄家。
鍛錬は一度ここまでとして、井戸に身体を清めに向かった。
その間に泰葉は手ぬぐいを取りに行き、庭に面した廊下で待つ。
親子揃って井戸の水を、頭に掛け合う姿はなんとも微笑ましく感じる。
次第にその手ぬぐいを濡らし、上半身を拭くのに脱ぎ始めたもんだから、泰葉は慌てて居間へと移動した。
槇「なんだ…?泰葉さん、まさか恥ずかしくなってしまったのか?」
杏「む…そういえば、俺の着流しがはだけた時にも恥じらっていました。」
槇「そんなんで、お前大丈夫か?」
杏「むぅ!」
その会話に千寿郎は?を浮かばせた。