第32章 報告と離れ
槇寿郎は煉獄家から痣者はでないと知り、この道を諦めている。
そして、息子に痣が出たと知り、尚のこと今度は諦めたことを悔やむのではないか…。
杏寿郎は不安に襲われながらも、槇寿郎の顔を見た。
目を見開き口をぽっかりと開け、杏寿郎を見ている。
ただただ、驚いている…ように見える。
槇「まさか…煉獄家に痣者が出るとはな…!!
それは凄いことだ!信じられん!!」
興奮気味な槇寿郎。その様子に安心したが、杏寿郎には痣についてもう一つ言わなくてはならないことがある。
杏「父上、痣の事ですが…
今回、俺の他に竈門少年、恋柱の甘露寺、霞柱の時透にも痣が出ました。
そして、この痣が出た者は…
例外なく、25を迎えるまでに命を落とすそうです。」
25歳までに命を落とす。
杏寿郎は20歳…まもなく21歳になろうとしている。
後4年…
槇「………。」
流石にショックを隠せない槇寿郎。
槇「自分の時には、そんな代償があっても痣を出したいと思っていただろうにな…
自分の息子になると、その代償に衝撃を感じてならない。」
何とも言えぬ表情で杏寿郎を見つめる槇寿郎。
槇「この事は泰葉さんは?」
杏「いえ、まだ…」
槇「そうか。」
「もう出てしまったのだから、選べまい。
25歳までは、人生を全うしてくれ。
これが、父の願いだ。」
杏「はい。」
少しの沈黙が流れる。
槇「…で。三つ目はなんだ?
報告は三つあるのだろう?」
杏寿郎は下がった眉をキリリと上げて、いつもの溌剌とした様子に戻る。
杏「はい!!
先日、泰葉さんに想いを伝え、恋仲となることになりました!」
槇寿郎は、杏寿郎の最後の報告に頬を綻ばせた。
槇「そうか、一つでも喜ばしい報告があって良かった。
実は、お館様に文を出した。
泰葉さんは最近物騒なことに巻き込まれる。
お前もだろうが、俺も千寿郎も気がかりでな。
いっそのこと、離れにでも住んでもらったらどうかと思ったんだ。」
杏「なるほど、それで…」
「しかしながら、泰葉さんは今までの暮らしも名残惜しいようで、二つ返事にはなりませんでした。
彼女の自由は奪いたくありません。泰葉さんが決断するまで待とうかと。」
槇「そうだな…」
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