第31章 緊急柱合会議
「それは…煉獄家では、皆さん煉獄さんなので、杏寿郎さんと呼んでいますが、外に出ればあなたは炎柱様。威厳あるお方でしょう?
私が気安く呼んではいけません。」
杏「胡蝶や甘露寺、時透も名前で呼んでるじゃないか。」
「それは…お願いされたから…」
髪の毛を拭く手を止める杏寿郎。
すると、グイッと泰葉の顔を上に向ける。
逆さまに目が合った。
杏「それは、俺もお願いをすれば、いつも名前で呼んでもらえるということだろうか?」
理屈としてはそうだが、泰葉は他の隊士達からすればただの一般人。
本来なら柱に気安く話しかけていい存在でもないのだ。
杏寿郎の威厳を害いたくない。
悩んだ泰葉は、ニコッと微笑んで手を杏寿郎の頬に伸ばす。
「では、1人の男、煉獄杏寿郎と2人きりの時には名前で呼びましょう。敬語もなし。
でも、炎柱の煉獄杏寿郎の時には、私は煉獄様と呼び敬語を使います。
仕事と私的の時を使い分ける…いかがですか?特別感が出ませんか?」
杏寿郎は泰葉の提案にふむ…と考える。
そして、パッと明るい表情になった。
杏「うむ!そうしよう!」
嬉しそうに頷く杏寿郎。
案外、丸め込むのがチョロい…かもしれない。
杏「しかし、俺はすでに名前で呼んでいるしな…敬語でもない。」
「今まで通りでいいわ。杏寿郎さんに呼ばれるだけで嬉しいから。」
早速敬語を外しての会話に、特別感を感じ頬を赤らめる杏寿郎。
杏(存外、これはクルものがかあるな!)
そんな穏やかな午後の空気が流れた。
杏「ところで、もう体調は何てことないか?」
「うん、おかげさまで元気になりました。」
そのまま後ろから抱きしめられるような体勢で外を眺める2人。
杏「なら良かった!実は明日、緊急柱合会議がある。
泰葉さんは、それには参加しないが、里から戻ったら来るようにお館様から言われている為、一緒に行って欲しい。」
「…?分かった。お呼びと言うなら行かないとね。」
杏「おそらく、金崎の話だと思う。」
「えぇ。分かった…」
あれから金崎を見かけていない。
しかし、解決しない限り不安は拭えない。
杏「不安か?」
「少し。」
泰葉が正直な答えを漏らすと、ちゅっと頬に杏寿郎の唇が落ちた。