第31章 緊急柱合会議
泰葉は昼食を食べた後、湯浴みをさせてもらった。
5日ぶりの入浴。
心も体もスッキリする。
ほかほかに温まって、新しい入院着に袖を通し、自分の病室へと戻る。
部屋に入ると、窓辺に寄りかかり外を見ている杏寿郎の姿。
「煉獄様…、どうしましたか?」
杏「…恋人の元へ会いに来たら不在だったのでな!」
溌剌とした答えに、顔を赤くする泰葉。
この部屋は個室。
ここに会いに来たということは、恋人というのは自分に間違いない。
「やっぱり、夢じゃないんですね。」
泰葉が笑うと、不思議そうな顔をする杏寿郎。
杏「夢では困ってしまう!せっかく泰葉さんと想いが重なったというのに!」
慌てたような口振りの杏寿郎に可愛く思ってしまう。
「そうですね。私もそうなっては困ります。」
泰葉は荷物を片しながら、クスクス笑った。
杏「泰葉さん、こっちへおいで。」
杏寿郎に手招きされて、少しドキリと胸が鳴る。
どうしたのかと杏寿郎の元に寄ってみると、まだ濡れた髪の束を杏寿郎の指が掬う。
杏「いつものようにきちんと結われ、化粧を施した泰葉さんも美しいが、このように素顔で濡れた髪の泰葉さんも、また愛らしいな。」
少し微笑みながら、恥ずかしげもなくそんな言葉をサラリと口にする杏寿郎。
泰葉は、心臓がもたないと恐ろしくも感じてしまう。
「以前から思っていましたが、煉獄家の方々は褒めすぎです!私の心臓がもたなくなってしまいます!」
泰葉が真っ赤な顔で訴えると、杏寿郎はクスリと笑った。
杏「なに分正直な家系だからな!嘘がつけん。
諦めてくれ!!」
「諦めてくれって…!」
泰葉が抗議しようとすると、杏寿郎は泰葉をグルンと後ろを向かせた。
杏「濡れた髪では風邪をひいてしまう。乾かしてやろうな。」
すぐ側にあった椅子を引き寄せて泰葉を座らせる。
後ろから手ぬぐいで髪の毛を撫で、丁寧に水気をとっていく。
杏「して、泰葉さんは、何故俺を煉獄様と呼んでいるのだ?
いつもは名前で呼んでくれているだろう。」