第30章 太陽の瞳
泰葉が目を覚ましたのは杏寿郎達より2日後の夜。
泰葉は目を開ける。
薄暗い一室。
消毒液の匂いが鼻を掠める。
懐かしい感じだ。
泰葉はここが蝶屋敷だとすぐに気づいた。
身体を起こそうとするが、体中が痛んで動けない。
水が飲みたい。
手だけ動かそうとすると点滴の棒に当たり、ガシャンと倒してしまった。
その音を聞きつけたのか、パタパタと音がする。
ガラッと戸が開いて、しのぶが現れた。
「あ……めん、な…」
泰葉は喉がカラカラで声がうまく出ない。
しのぶは優しく微笑み、点滴の台を立て直して泰葉に水をくれた。
久しぶりの水は口にも体全体にも染み渡っていく。
し「痛みはどうですか?泰葉さんは4日眠り続けたのよ。」
「4日…。痛みは寝たままだと大丈夫。起きようとしたら動けなかったわ。」
泰葉は眉を下げて、これは参ったと笑ってみせる。
しのぶは泰葉の脈を測ったりしながら前髪を撫でた。
し「…無茶をしたの?鼓膜も、脹脛もこんなになって。」
泰葉は無茶をしたのかと自分に問いかける。
「無茶…はしていないよ。ちょっと身体に鞭打って動いてしまったけど、自分に出来ることをしようとしただけ。」
泰葉がしたのは無茶ではなく無理。
しかし、鬼と戦う鬼殺隊はこれが日常茶飯事なのだろうと溜息がでる。
し「どうしたの?」
「早く、鬼がいなくなれば良いのにって。
し「本当に。」
少しの沈黙の後、泰葉は戦いの中で見た走馬灯について思い出す。
「そうだ!しのぶさん、私大切な事を…っ!!」
しのぶに話そうと思った時、耳が痛み出す。
し「痛み止めが切れ始めましたね。待っていてください、すぐに治してもらいましょうね。」
しのぶの唇がそう言った。
治してもらいましょうね…
誰に…?
泰葉が不思議に思っていると、部屋に人が入ってきた。
その人物は杏寿郎。
「煉獄…様?」