第29章 痣
炭治郎が刀鍛冶の指差す方を見てみると、
泰葉に支えられた禰󠄀豆子が、日の光を浴びながら歩いて来る。
炭「ね…禰󠄀豆…子…」
禰󠄀「お…お、おはよう」
にっこりと笑う禰󠄀豆子。
炭治郎はズルズルと身体を引きずりながら、禰󠄀豆子に抱きついた。
禰󠄀豆子は言葉を話し、日の光を浴びても大丈夫とはいえ、爪は鋭く牙もある。目も猫のように縦長になっているので、人間に戻った訳ではなさそうだ。
「炭治郎くん、禰󠄀豆子ちゃん…よかったね。」
炭「禰󠄀豆子!禰󠄀豆子ぉ!うわあぁぁぁ!!!!」
一度は失ったと思った妹が生きている。
炭治郎は堰を切ったように、声をあげて泣いた。
禰󠄀「よかった…ねぇ。」
ニコニコしながら炭治郎の頭を撫でる禰󠄀豆子。
炭「塵にならなくて!本当に良かったぁ!!」
『本当にありがとうなぁ、俺たちのせいで禰󠄀豆子ちゃん死んでしまったら申し訳がたたないよ…』
周りももらい泣きしている中、玄弥も炭治郎の元へとやってきた。
もう鬼化は解け、崖を降りた際に左腕に怪我を負っている。
しかし、玄弥は穏やかな顔をしていた。
泰葉は玄弥に向かって、ちょいちょいと手招きをする。
玄「?どうした?」
「炭治郎くんと禰󠄀豆子ちゃん、よかったね。」
玄弥は少し微笑む。
玄「あぁ。本当に良かったよ…。」
「玄弥くん、手…貸してくれる?」
玄弥は手?と戸惑いながら右手を出した。
泰葉は玄弥の手で、自分の涙を拭った。
玄「なっ!そういうのは、自分の手で…!!」
顔を真っ赤にして、パッと手を退く玄弥。
しかし、その時じわじわと暖かく気持ちの良い感じが体中がを巡る。
玄「あれ…左腕…」
先程まで痛かった左腕が何ともなくなっている。
所々にあった怪我なども消えた…。
玄「ありがとう。泰葉さんの力…すげぇな。」
そうしていると、炭治郎の気が抜けたのか、体力の限界が訪れガクンと気を失ってしまった。
玄「炭治郎⁉︎大丈夫か⁉︎」
玄弥が炭治郎を受け止める。