第29章 痣
禰󠄀豆子を焼き殺す事はできない。
しかし、泰葉には鬼を斬れず、近くにいるのは炭治郎だけ。
「炭治郎くん!!!鬼を!!鬼を斬って!!!」
炭治郎には酷な選択。
そんな事は分かっている。しかし…
すると、禰󠄀豆子は思い切り炭治郎を蹴飛ばした。
その時、禰󠄀豆子はにっこり笑った。
炭治郎に
「ありがとう、大丈夫。」
というように。
その笑顔を見て炭治郎は涙を流し、意を固めた。
泰葉は炭治郎が向かって来るのを確認して、入れ違うように禰󠄀豆子の元へと向かった。
「禰󠄀豆子ちゃんは、私が助ける!!」
そう声をかけた。
禰󠄀豆子の元へ行くと、酷い火傷のようになっている。
泰葉は禰󠄀豆子を抱き上げ、日陰へと急ぐ。
禰󠄀豆子は痛そうに唸り、食いしばっているのか、口枷の竹はミシミシと音を立て…
バキッ!!!
禰󠄀「うあぁ!!」
悲鳴をあげる禰󠄀豆子。
泰葉は治癒をしたかったが、鬼に血をあげるのはダメだと聞いている。
「お願い、禰󠄀豆子ちゃん、頑張って…」
泰葉の目から涙が一滴零れる。
禰󠄀豆子の頬にそれが落ちると、みるみるうちに火傷のような傷が消え、綺麗な肌に戻っていった。
すると、禰󠄀豆子はむくりと起き上がり、立ち上がった。
フラフラとした足取りだが炭治郎の方へと歩き出す。
「禰󠄀豆子ちゃん!そっちはダメ!!」
ーーーーーーー
炭治郎は涙を堪えながら、鬼の急所を探る。
集中して鬼を見ると、不思議と身体を透かしてみることができた。
頸を失くした鬼の心臓部分に、小さな半天狗が隠れている事を突き止めた。
炭「命をもって、罪を償えェェ!!」
炭治郎は大きく刀を振りかざし、鬼の心臓を確実に斬るように振り下ろした。
心臓の中の半天狗の頸を斬り落とす。
『ギャァァアァ!!』
鬼の身体がバラバラと崩れていく。
ハァハァ…と息を切らす炭治郎。
ぼろぼろと涙が溢れて来る。
勝った…
禰󠄀豆子を犠牲にして…
日の光に焼かれた禰󠄀豆子は骨すら残らない。
炭「うう…ううう…」
『竈門殿、竈門殿…』
炭「?」
炭治郎は話しかけて来る刀鍛冶を、涙でぐしゃぐしゃになった顔で見上げる。
刀鍛冶は炭治郎の後ろを指差す。