第29章 痣
ゴゴゴゴッと地鳴りを起こし、また石竜子が出現する。
容赦なく杏寿郎と、蜜璃に向かって牙を剥く。
それを2人は素早い動きで切り刻んでいく。
『く…あの男も、女も格段に速度を上げている…
何かしたのか…』
憎珀天は杏寿郎と蜜璃の体力は消耗されているはずなのに、なぜこんなに動けるのかが疑問だった。
すると、杏寿郎の頬、蜜璃の鎖骨あたりに痣が出ているのに気づく。
『!!
あいつら…痣?あんなものあったか…鬼の紋様にも見える…』
杏「甘露寺!君の刀は遠距離に有利だ!
そちらの竜を頼む!俺はこちらの鬼を引き受ける!」
蜜「はい!引き受けます!」
杏「竈門少年たち!大元を頼む!こちらは俺たちに任せろ!」
炭「はい!!!」
憎珀天はその会話を聞いて、そうはさせるかと太鼓を鳴らして雷を落とす。
しかし、すぐに杏寿郎がやってきて、それを阻む。
杏「君の相手は俺だ。」
ニッと笑った杏寿郎に憎珀天は悪寒を感じる。
(不愉快極まれり!!こいつらのせいで童のところへ石竜子をやれぬ!!)
憎珀天は少しずつ焦りを感じていた。
このままでは炭治郎達に見つかってしまう。
『くそっ!!』
『狂鳴…』
ドゴォッ
憎珀天が血鬼術を出そうとした時、背中に衝撃が走る。
『ぐはっ…』
憎珀天の背中に拳を入れた人物。
杏寿郎は目を見開いた。
泰葉だったからだ。
杏「泰葉!大丈夫か⁉︎」
泰葉は袴が裂けてしまったため、杏寿郎の羽織を腰に巻きつけていた。
鼓膜は破れているので、聞こえないようだ。
泰葉は憎珀天に蹴りをいれる。小さな太鼓を繋げた細い部分をガシッとと掴み、へし折ろうとしているようだが、硬く上手くいかない。
杏寿郎は泰葉のやろうとしている事に気づいた。
泰葉も杏寿郎の動きを見て意を汲んだと理解する。
グルンと憎珀天の向きを変え、杏寿郎に背中を向けるようにした。
杏「弐ノ型 昇り炎天!!」
ザンッ
杏寿郎の刀は憎珀天の背中を斬りつけた。その斬撃が憎珀天の太鼓を細かく切り刻む。
『女ぁぁ!! なぜ生きている⁈なぜ動いている⁉︎』