第28章 不穏
『柱か…』
憎珀天はドンドンッと太鼓を鳴らす。
その音により雷が落ちる。杏寿郎は器用に躱しながら憎珀天に近づいていく。しかし、上手くは行かずまた太鼓を叩くと音波での攻撃を仕掛けてきた。
杏「気炎万象!!」
杏寿郎は音波を斬り倒す。
『チッ…こいつ…斬りおった。』
杏寿郎はこの一瞬で憎珀天の特徴を捉える。
主に雷と、音波の攻撃。そしてこの木の怪物も操る…
なかなか手強いな…、特にあの音波。
あれを喰らったら耳は使い物にならないだろう。
『ちょこまかと…』
憎珀天はそれぞれに攻撃をしてくる泰葉達や、杏寿郎に苛立っているようだ。
『血鬼術 無間業樹』
メキメキと大きな音を立てて、5体の木の竜が出現した。
竜の頭は最高で5本!伸びる範囲はおよそ66尺だ。
炭治郎はこの血鬼術を分析し、頭を斬ろうと構える。
炭「ヒノカミ神楽 碧羅の…」
ギャイィィィィ!!!
竜の口から放たれた音波を、炭治郎はまともに喰らってしまった。
鼓膜が破れ、目を回している。
グラングランと視界が回って立つことができない。
竜はそんな炭治郎を踏み付けにしようと足を持ち上げる。
素早くはないが、立つことのできない炭治郎には回避できない。
「炭治郎くん!!!」
泰葉が炭治郎の元へ高速で移動し、瞬時に抱え避けた。
しかし、その時竜の爪が泰葉の脹脛(ふくらはぎ)を掠った。
「…っ!」
泰葉の脹脛から血が伝う。
その瞬間を見逃さず、憎珀天は炭治郎と泰葉に向かってドンドンと雷を打ち込む。
呼吸の暇がないくらいに仕掛けてくる。
泰葉が炭治郎をまた抱えて逃げようとしたところに、杏寿郎がその雷を斬り飛ばしてくれた。
杏「大丈夫か⁉︎」
「炭治郎くん、大きく息を吸って!」
次々と畳みかけてくる攻撃により、炭治郎は息をすることを忘れている。泰葉は脹脛の血を指で拭い、炭治郎の口に指を突っ込んだ。
炭治郎の身体は回復し、ガハッと息をし始めた。
杏寿郎は一番大きな竜の頭と対峙している。雷と音波を斬ることができても、中々距離を詰めることができない。