第28章 不穏
泰葉は炭治郎達のところへと戻ってきた。
すると、炭治郎達の前に立ちはだかっているのは、木に竜の様な大きな顔のついた得体の知れないもの。
そして、その脇には少年の様な鬼がいた。
雷神のような太鼓を背負っている。
辺りをみても、先程の鬼たちの姿はない。
これは…どういうことだろうか。
戸惑っていると、炭治郎が隣にやってきた。
炭「泰葉さん、よく聞いてください。
本体はあの木の真ん中、コブの中にいます。
あの子供のような鬼は、喜怒哀楽が合わさったものです。
あの太鼓を叩くと、喜怒哀楽が使っていた技が出ます。
あの木の頭の正面に行くと、音波を喰らってしまう。あなたは絶対に正面には行かないでください。」
「分かった!ありがとう。私には鬼は倒せない。援護する。」
炭治郎は、頷いてまた鬼の前へと構えをとった。
鬼はギロリと炭治郎を睨んだ。
ビリビリと威圧感が伝わってくる。
『何ぞ?儂のする事に何か不満があるのか?…悪人共。』
声が…威圧が…重い。
手足に力が入らなくなる。立っていられない。
この鬼の大元、半天狗は窮地に追い込まれると、己の身を守ってくれる強い感情を血鬼術により具現化分裂し、勝ってきた鬼。
追い込まれれば追い込まれるほど強くなる。
炭「どうして…どうして俺たちが悪人なんだ。」
『"弱き者“をいたぶるからよ。先程貴様らは掌に乗るような"小さく弱き者"を斬ろうとした。何という極悪非道。これは鬼畜の所業だ。』
半天狗により喜怒哀楽が集結した鬼、憎珀天の理解し難い言い草に、怒りで肩を震わせる炭治郎。
炭「小さく弱き者?誰が…誰がだ。
ふざけるな!喰らった人間の数は100や200じゃないだろう!
その人達全員がお前に何かしたのか?大勢の人を殺して喰っておいて、被害者ぶるのはやめろ!捻じ曲がった性根だ!絶対に許さない!」
その時、炭治郎の隣にひらりと炎の羽織が舞い降りた。
杏「あぁ!罪なき人に牙を剥こうとするならば生かしてはおけまい!
少年!この鬼は必ず首を斬るぞ!」
炭「はい!こいつの本体はあの木のコブに守られています!」
杏「うむ!正しい位置は君たちの方が分かっていると思うから、少年達が斬ってくれ!俺は援護しよう!」
炭治郎は杏寿郎の言葉に頷いた。