第28章 不穏
泰葉は大きく右足を振りかぶり、積怒の頭を思い切り蹴飛ばした。
『ぬぁ!!!』
ドゴォッと鈍い音と共に積怒は壁に向かって飛んで、強く打ち付けられた。
『カカカ!あちらの方が面白そうじゃ!』
可楽が積怒が攻撃されている事に気づいた。
団扇を泰葉に向けて一振りする。
ゴォッ
泰葉は避けようとしたが、広範囲の突風に間に合うことができず、壁に打ち付けられた後、その壁ごと飛ばされてしまった。
「く…はぁっ!!!」
飛ばされながら、あたりの景色がビュンビュンと変わっていく。
どこまで行ってしまうのだろうか。方向だけは覚えておきたい。
ーーーーーーー
森の奥に飛ばされた泰葉。
幸いにも枝などに引っかかることもなく、着地に成功した。
「ふぅ、ただ距離があるな…。
無一郎君も大丈夫かしら。」
すると、一羽の鴉が泰葉の近くを飛んだ。
「あれは…」
まつ毛のバサバサな鴉。
「無一郎くんの鴉さん!無一郎くんはどこ?」
すると、無言で飛んでいく。ついてこいと言っているみたいだ。
泰葉は見失ってはいけないと、木に飛び上がり枝を跳んでついていく事にした。
銀子がある場所に降り立つ。
泰葉も後に続いた。
少し開けた所に出ると、泰葉は目を見開いた。
泰葉の目の前にいるのは、水のようなものに入ったトゲだらけの無一郎。
身動きせずに、今にも力尽きてしまいそうだった。
小「絶対死なせない!時透さん頑張って!!」
小鉄は包丁を突き刺すがグニグニとしていて歯が立たない。
「小鉄くん!これは…⁉︎」
小「お姉さん!気持ち悪い奴が時透さんを閉じ込めてしまったんです!!」
小鉄を見る限り、刃物は通じないようだ。
だとすると、無一郎自身に頑張ってもらうしか無い。
すると、無一郎が目を見開き、何かを必死に訴えている。
ジャキン…
泰葉は気配に気づき、小鉄から包丁を奪い、小鉄を狙ったハサミを防いだ。
泰葉が見ると、それは鯉のような生き物。手が生えていて、鋭いハサミのようなものをつけている。
泰葉は鯉の相手をする。
ヌメヌメとして気持ち悪い。
「小鉄くん!
その中に息を吹き込んで!空気を送れないかしら!」