第28章 不穏
炭治郎達は苦戦していた。
炭治郎は空喜、禰󠄀豆子は可楽、玄弥は哀絶。
それぞれ劣勢だった。
泰葉は建物の影から自分のすべきことを考える。
日輪刀を持たないので、頸を切ることができない。
そもそも、炭治郎もどんな武器でも倒すことができないと言っていた。
…とすると、泰葉がすべきことは、炭治郎達の援護一択である。
それぞれの敵と対峙している間も、あの積怒が雷を落とす。
あの電撃を喰らうと、禰󠄀豆子でさえも戦闘が難しくなる。
「私が積怒を何とか引きつけるしかない…。」
電撃がないだけ、自分の相手に集中できる。
泰葉の戦闘スタイルは猗窩座と同じく武術に近い。
近距離に行かなければならないが、相手は電撃を使って遠距離でも攻撃できる。
圧倒的に不利。
しかし、やらなくては…
自分で自分の治癒ができない泰葉は些か不安だったが、みんなを死なせるわけにはいかない。
よく見ていると、錫杖の下の部分を打ちつける事により電撃が出ているようだ。そして、電気にも流れがある。
泰葉は目を見開き、グッと集中する。
すると、やはり電撃は基本的に狙った場所に放たれ、近くの電気を通しやすいものに感電している。
(私は全集中など特殊なものを持っていない。あの電撃を食らったところでおそらく心臓は止まる。)
泰葉は辺りを見渡す。瀬戸物の蓋付きの入れ物と、壊れた壁の近くに釘が数本落ちているのが見える。
泰葉は素早く入れ物と、釘を拾い集め、その中に入れた。
それを懐に入れる。
『何をこそこそしている。死にたくなければ、姿を見せなければ良かったものの。あぁ、腹立たしい。』
積怒は泰葉に狙いを定めた。
泰葉はすぐにトンっと跳び上がる。
『跳んだところで無駄だ。』
錫杖をドンッと打ちつける。泰葉に向かって電撃が線状になって向かってくる。懐から釘を取り出し、それを自分の近くに投げつけた。
電撃はその釘にバリバリと流れていく。
瞬間的に泰葉は積怒の背後に回り込む。
積怒としての反射速度は泰葉よりも遅いようだ。
積怒は泰葉が電撃を喰らっていると思い込んでいるのか、背後は一切気にしていない。