第26章 志
炭「渡しちゃったのか…
事情もよく分からない俺がゴチャゴチャいう事じゃないけど…」
『いえそんな!嬉しかったです。
見ず知らずの俺を庇ってくれて…。
ありがとうございました。』
炭「いやいや、役に立たず…」
訳の分からないままの泰葉に、炭治郎は一通りを説明した。
「そう…無一郎くんが…そんな事を。」
泰葉はいつもの無一郎から見られない一面に驚いていた。
周りからしたら泰葉に対する一面の方が驚きなのだが。
炭「無一郎くん…
泰葉さん、霞柱ともお知り合いなんですか?」
「う、うん。柱の皆さんとは一応。」
泰葉と柱の繋がりに驚く炭治郎。
「ところで何の鍵だったの?」
『からくり人形です。俺の先祖が作ったもので…』
説明を聞く限り、
そのからくり人形は百八つの動きができる。
人間を凌駕する力があるので、戦闘訓練用に利用しているそうだ。
炭「そうか、彼は訓練のためにそれを…」
『はい…
だけど、老朽化が進んで壊れそうなんです。』
ガキィィン!!
金属がぶつかるような激しい音が響いた。
炭「わぁ!なんだ⁉︎」
『さっきの人がもう…
こっちです!』
炭治郎と、泰葉は子供の後について行く。
案内された場所に行ってみると、無一郎は何かと戦っているようだった。
ギャギャギャギャ!!!
けたたましい音の中、無一郎は俊敏な動きで対応していた。
炭治郎達には早すぎて見えていない。
泰葉も、かろうじて見えるくらいだった。
『あれが戦闘用絡繰人形、縁壱零式です。』
それは、成人男性の姿をしており、長い髪を高い位置で一つに括っている。
炭治郎はその顔に覚えがあった。
炭(あの人…どこで見たんだっけ?)
「腕が6本あるのはなんで?」
『父の話によると、あの人形の原型となったのは実在した剣士らしいんですけど、腕を6本にしなければその剣士の動きを再現できなかったそうです。』
炭「その剣士って誰?どこで何してた人?」
『すみません、そこまでは…』
どうやら、この絡繰人形は戦国時代に作られたという。
300年以上も壊れていない。
すごい技術のため、今の刀鍛冶達の力でも追いつかないそうだ。
壊れてしまったら、もう直すことができない。