第3章 蝶屋敷
杏寿郎はしのぶに言われて、確かに…
と左目が機能しているのを確認した。
今まで通りすぎて、自分では気づかなかったが、自分があの時痛みを伴って、潰されたはずの目が何事もなく動いている。
肋骨も、砕ける音がして、内臓も聞いたことがない音を立てて、激痛が走ったことも覚えている。
それなのに…
「よもや、どこもなんともない。」
「「「「今⁉︎⁉︎」」」」
しのぶは杏寿郎の天然発言に頭を抱えた。
善「でも…変わったことは特に無かったですけど…
煉獄さんに触れたのは泰葉さんだけです。
泣きながら怪我した所を撫でた時に、煉獄さん咳き込んで…
少し血を吐き出した後、心臓の音が戻ってきたんです。」
炭「うん…煉獄さんは泰葉さんの膝で抱えられていたから…俺たちは触れていません。」
(※正しくは膝枕状態)
杏「膝に…抱え…??」
またもや固まる杏寿郎。
しのぶは考えていた。
そうなのだとしたら彼女には不思議な力がある…いや、そんな物語の世界でもあるまいし…
し「…ありがとうございます。
確実な何かは掴めませんが…もう少しだけ、様子を見てみるとしましょう。
みなさん、病み上がりのところお疲れ様でした。」
今度こそ、解散となった。
しのぶは部屋を出て行く時に4人に釘を刺す。
「みなさん、あと3日は絶対安静ですからね。
…鍛錬など始めたら…わかってますね?」
4人にはゾクっと悪寒が走った。
杏「…少年たち、分かったな?
…待機命令だ。」
「「「はい」」」
しのぶはその足で泰葉の部屋へと向かった。
ーーーーーーーー
コンコン
泰葉の病室のドアが鳴る。
「はい。」
しのぶが静かに入る。
泰葉は、今からでも炎柱様に会いに行くのかな?
と思い立ち上がる。
すると、それをしのぶが制した。
し「ごめんなさい、今は会いに行きませんよ。」
泰葉は肩を落とす。
「炎柱様の具合がよろしく無かったんですか?」
し「いえ、彼は頗る元気でした。
ただ、少し私が気を急ぎすぎてしまったのです。
一度、当主に確認をしてからにしようという事になりました。」
「あ、そうなんですね。分かりました。
…その時までに…思い出せるかしら。」
少し不安そうな表情をする泰葉の手を取るしのぶ。