第3章 蝶屋敷
し「大丈夫ですよ。
思い出せていなくても構いません。私たちは泰葉さんを苦しめたくはないのですよ。ゆっくり、自分に決心がついたら、きっと記憶の蓋が開くと思います。」
しのぶの言葉に、泰葉の心は軽くなった。
ありがとう、とにっこり微笑んだ。
「あ、そうすると私が炎柱様にお会いするのは、いつかまだ分からないんですよね?
そうなると私は退院した方が良くなるのでしょうか?」
し「もし、ここを出たら…どちらに?」
「一度、浅草の1人で住んでいる家に戻ろうかと…」
し「…私たちはこちらにいてもらっても構いませんが、家の方が落ち着くのであれば、帰っても大丈夫ですよ。」
泰葉は浅草で一人暮らし。
小さな民家で、昼間親が働いている時に代わりに幼子の面倒を見る…言わば保育園で働いていたという。
列車に乗り、見合いの話をしに故郷に帰る途中、今回の件に巻き込まれた。
話によっては、故郷に帰るしかないと思っていたので、浅草での仕事は辞めてきたという。
家自体はまだ引き払ってはいないため、戻ることはできる。
なので明後日、泰葉は退院することとなった。
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その頃、杏寿郎の部屋では、炭治郎達が残っていた。
炭「煉獄さん、本当にもう大丈夫なんですか?」
杏「あぁ、なんともない!世の中には不思議なこともあるもんだな!」
(相変わらず前向きだな…)
杏「して、気になっていたのだが、俺はどこまで脱がされていたのだろうか⁉︎」
善「どこまで…上半身です。前をはだけさせただけと言いますか…」
杏「そうか!それならばよかった!
もしや、全部脱がされたのかと思って気が気では無かった!そしたら死んでも死に切れん!」
善「いや、もしそうなら全力で止めますよ。若い女性がいくら死んだ人でも、そんなことしちゃダメだって。」
炭「こら、善逸。縁起でもない事を言うな。」
伊「でも、あの時あいつすげぇ泣いてたよな。」
炭・善「うん」
その時のことを思い出す3人…
しかしどうしても、涙で瞳を潤ませ、頬が色づき隊服のボタンを外す色っぽい仕草の泰葉を思い出してしまい、顔を赤くしながら俯いた。
その様子を見て、ますます何を見たのか気になって仕方がない杏寿郎であった。