第25章 温泉
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し「泰葉さん…ということですね?」
杏「あぁ。そのようだ。黒髪に癖毛で、穏やかな性格の女性だったらしい。」
杏寿郎から宇髄邸で知った内容を聞いて、しのぶは顔を顰めた。
し「万が一、泰葉さんが気を許そうもんなら、漬け込んで痛めつける気だったのでしょうか。」
杏「少なくとも、金崎の中ではその女性と婚約の身だ。
なんとしてでも、泰葉さんを連れ戻そうとするかも知れん。」
そうなると、恐ろしいことである。
し「金崎は、まだ泰葉さんにも、ほかの隊士にも何も問題を起こしていません。なので、彼自身を処分する事もできませんね。
そうなると…泰葉さんには治療に出るのを辞めてもらうしかありませんね…」
杏「あぁ。その方が良いだろう。
泰葉さんには申し訳ないがな…」
し「分かりました。とりあえず、この事は泰葉さんを巻き込んだ案件です。お館様に連絡を入れておいた方が良いでしょう。」
杏「あぁ。分かった。俺から報告をしておこう。」
そう言って、杏寿郎は蝶屋敷を後にした。
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杏寿郎は屋敷に戻り、お館様に今知る限りのことを書いて鴉を飛ばした。
今は刀鍛冶の里に行っているため、泰葉への接近はないが、また戻ってからが心配だ。
なんて危ないやつに狙われてしまったのだろうか…。
杏「俺がずっと側にいられたのたら…
守ってやれるというのに…。」
杏寿郎の独り言は、夕方の静かな空気に消えていった。
暫くすると、要が杏寿郎の元に帰ったきた。
足に手紙が括られている。
『刀鍛冶の里から帰ったら、泰葉と屋敷に。』
と書いてあった。