第25章 温泉
な「しのぶ様!炎柱様がいらっしゃいました。」
し「どうぞ〜」
なほが襖を開けると、畳に座ったしのぶがいた。
杏「胡蝶!休憩のところすまないな!」
し「大丈夫ですよ。もうそろそろ戻ろうかと思っていたところです。」
杏寿郎は、真剣な顔つきになる。
それだけで、しのぶは話の内容を察した。
し「何か…分かったのですね?」
杏寿郎は頷いた。
杏「宇髄にはまだ色々と探ってもらっているのだが、今のところで分かった事がある。」
………………
宇髄邸にて。
天「呼び出して悪いな、煉獄。」
杏寿郎は天元に呼び出されていた。
杏「いや、問題ない。俺を呼び出したという事は何か分かったのだろう?」
天元は少し顔を顰めて、頭を掻いた。
天「あぁ。色々と調べているんだが…金崎侑という男は、ちっと危ねぇかもしれない。」
杏「どういう事だ?」
天「金崎が鬼殺隊に入った理由が、婚約者を鬼に殺されたからだ。」
婚約者を鬼に殺された…という理由は、決して珍しくはない。
しかし、それが危ないとは…どういう事だろうか。
天「でも、その婚約者っていうのは金崎が思っているだけなんだよ。」
杏「…どういうことだ?」
天「金崎には恋仲である女は実在した。しかし、結婚を申し込んだ時断られている。でも、金崎は一方的に婚約をしたことにして、親にも周りにも話していたらしい。」
その話だけでも、金崎という男はヤバいやつだ。
しかし、問題はまだあった。
天「その女に断られた理由は、金崎からの暴力だ。
アイツは歪んだ嗜好をもっている。一見穏やかそうな顔で近づいて、心に漬け込んだ頃、全てを自分のものにする。
力でものを言わせ、嫌がり怯えた顔に興奮する加虐的嗜好だ。」
杏寿郎は顔を顰めた。
いつでも笑っているような顔の裏では、何を考えているのか…、理解し難かった。
天「まぁ、そんな顔にもなるわな。
いつも女の顔や見える場所には痣や傷はつけない。
恋仲である自分しか見えないような場所につけるって話だ。
よく、肌を強めに吸って付ける所有印みたいなものだと思ってるのかも知れねぇが、悪趣味だぜ。」
杏「痣や傷をつけるなど…本当に愛したものに対するものなのか?
天「理解し難いが、金崎にとってはそれが愛の形になってるんだろうよ。
…で、その女に似てるのが…」