第25章 温泉
見せてあげようか…とは?
泰葉が目をパチパチさせていると、無一郎は段々と悪い顔になる。
無「一緒に入ろう?そうすればお互いの全部が分かると思うんだけど…。」
無一郎は悪い笑みを浮かべた。
14歳とは思えない色気を放っている。
蜜璃はドキドキと、手を口に当てて見ていた。
「私が無一郎くんの全てを知ってしまうのは勿体無いわ。
それは、無一郎くんが心から想う人に知ってもらうべきよ。」
泰葉は眉を下げて、諭すように微笑んだ。
無一郎は少しムッとした顔をする。
無「僕が心から想ってるのは泰葉だけだよ。
これからも、それ以上は出てこない。」
無一郎が真剣な眼差しで言っているのは分かっている。
泰葉も揶揄ってあしらっているわけではない。
「そう想ってくれるのは、本当に嬉しい。
それじゃ…
記憶が戻っても、同じように想ってくれていたら、また教えてくれる?」
一度は自分の記憶を失っていた泰葉だからわかる。
記憶を戻したとき、考え方が変わってくるのだ。
今はすぐに記憶を無くすからか、何ごとにも無関心だが記憶が戻ったらどうだろうか。
非常に愛情深いかもしれない。
戻ったらむしろ恋愛ごとにも興味を失うかもしれない。
無「…分かった。」
無一郎も、泰葉が揶揄って言っているわけではないと分かっていた。
蜜璃は、どうなるんだろうかと心配していたが、とりあえず治った事態にホッとした。
そして、温泉について女湯と男湯に別れた。