第23章 危険
〜杏寿郎視点〜
俺は確認して、安心したかった。
あの戦闘能力まではいかなくとも、男を躱す体術を発揮できることを。
パタンと、後手に襖を閉める。
自然と泰葉さんと2人きりだ。
本気で襲う気はないが、この環境が嫌でも脈を速くさせる。
「き、杏寿郎さん?試したいことって…?」
泰葉さんが、戸惑っている。
それはそうだろうな。
いきなり押し倒した方が本来の対応だろうが、俺だからそんなことはしないだろうと思っているかも知れない。
そして、何より嫌われたくない。
一応、予告を入れる。
さて、これで泰葉さんは完全に抗えるだろうか…。
俺は泰葉さんに抱いている欲を集める。全て集めてしまうと抑えが効かなくなりそうだから、程々にしておこう。
俺が欲を孕んだ目を向ければ、ピクリと肩を震わす。
怯えているのか、泰葉さんの目が揺らぐ。
俺は、ただの男として泰葉さんとの距離を詰める。
決して、素早くも何ともない。
両手を掴み上げると、すぐに万歳の形になる。その手を片手で纏めればすぐに両手は使えない。
トンっと足を払えば、カクンと身体は布団に落ちていった。痛くないようにもう片方の手で受け止めはしたが…
すぐに俺に組み敷かれた状態が出来上がった。
今、俺は泰葉さんを試している。
本気で襲ってはいけない。
しかし、好きな女性とこの状態。
自分で作り出しておいて、理性が飛びそうだ。
泰葉さんは驚いた表情をするだけで、抵抗する気配はない。
…困ったな。
潤んだ瞳で俺を見ている。
薄暗くてよく見えないが頬も赤らんでるようだ。
男からしたら、唆る顔をしている。
あぁ、いっそのこと唇を奪ってしまいたい。
治療ではなく、男女としての口づけを。
俺は泰葉さんの顔に顔を近づけ、もう少し…というところで思い止まった。
もし、泰葉さんにその気は無かったら?
他に想い人がいたならば?
俺の中の理性が集まってきた。
「拒んでくれないと、本当に唇を奪ってしまうところだぞ。」
俺は今までの欲を押し込み、何ごとも無かったかのように、泰葉さんから離れた。