第23章 危険
金崎が治療に訪れたのは、泰葉が治療をする様になって3日目のことだった。
その時は鬼の爪で引っ掻かれたであろう切り傷がついていた。
「痛みますか?薬を塗るのに触りますね。」
『丁寧にありがとう。』
このくらいの程度だった。
最初の週は2日、次の週は3日、そまた次は4日…
だんだんと来る日にちが増えてくる。
泰葉は毎日沢山の隊士の傷を手当てする。
よっぽどな怪我だったりしない限り、なかなか覚えることはない。
しかし、これだけ回数を重ねてくると、顔は覚えてくる。
見た目は温厚そうだがどうなのだろうか…
縫うほどの怪我や、湿布では負えない打身などになれば、アオイやしのぶに引き渡す。
だが、いつも蝶屋敷には来る必要はあるが、アオイやしのぶに診てもらうまででもない程度の微妙な怪我をしてくるのだ。
そして、気になるのが傷を負う場所。
初めは腕などだったが、段々と首、太ももなど少し脱いでもらわないと見えないような箇所を怪我するようになったのだ。
そして、今日は背中。
杏寿郎は眉間に皺を寄せた。
杏「金崎はそれ以外に口説いたりはしてこないのか?」
「はい。それどころか、今日初めて名前を知りました。
いつも怪我の手当てをして終わり。
たまに、ここの店に行ってみたいなど独り言のように言っていますが、だからといって一緒に行こうなどは言われたことはありません。」
杏寿郎は考えた。
なぜそんなに泰葉に会いに来るのか…。
好意を寄せているからなのだろうが、
それにしても。
名前は名乗らない
直接には誘ったりしない
ただ治療を受けるだけ。
謎だ。
うーん…と首を捻っていると、泰葉が「あ…」と何かを思い出した。
「今日、少し彼が喋ったんです。
私の手が温かくて、いい気分だって。
私、その時悪寒がしてしまって…
そしたら、そんな怯えないで、僕を目覚めさせない方がいい…と言っていました。
何のことなのか分からないですけど…。
怖かったんです。」
その時を思い出したのか、また泰葉の手が震え出す。
杏寿郎はその手をそっと握った。