第23章 危険
1時間程経った頃、泰葉と千寿郎は部屋から出てきた。
図鑑の話だろう。楽しそうに話している。
泰葉が出てきたことに気づいた槇寿郎は、泰葉に声をかける。
槇「泰葉さん、風呂に入ってしまってくれないか。
いつもながら、男たちの入った後には気が引ける。」
「いつもいつも申し訳ありません。」
泰葉は頭を下げながら、湯浴みの用意をしに行った。
千「泰葉さんと、図鑑を見てまいりました!」
千寿郎は、居間に来るなり楽しそうに話し出した。
杏「その図鑑には何が載っているんだ?」
その図鑑は杏寿郎が先日買って帰ったものだったが、封がしてあり中を見ることはできないでいた。
千「沢山の生き物が載っています!今日は水辺の生き物のところを見ていました。
泰葉さんはカモノハシという生き物に興味があるようです。」
杏「カモノハシ…?」
千「はい!ネズミのような体で、鳥のような嘴が付いていて、尻尾はヒレのようで、水の中を泳ぐ動物です!」
千寿郎の説明で、槇寿郎と杏寿郎の頭の中で組み立てられていくカモノハシ。
しかし、どちらの頭の中では得体の知れない生き物が完成されていた。
槇「泰葉さんは随分変わったものが好きなのだな…」
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泰葉は湯浴みを終えて、客間で髪を乾かしていた。
ある程度乾いたところで緩く髪紐で纏める。
癖があるとどうも下ろしているのは抵抗がある。
真っ直ぐな髪に生まれたかったな…。
そう思いながら、少し風にあたろうと襖を開けた。
すると、風呂場の方から湯上がりの杏寿郎が歩いてきた。
暑いのか、髪は一つに纏め、着流しの胸元は緩めてあって逞しい胸筋やら腹筋やらが見え隠れしていた。
何だか、見てはいけないものを見た気持ちになる泰葉。
斜め上を見つめた。
杏「風にあたりに来たのか?俺も湯上がりで暑い。
一緒にあたってもいいだろうか?」
泰葉は戸惑いながらも頷いた。
もちろん、杏寿郎が男だということは分かっている。
しかし、こんなにも直接的に身体を見るのは初めてだった。
いつもは見えない項まで見えてしまっていて、どこを見て良いのか分からない。