第23章 危険
…うまく巻いたようだ。
しかし、階級は甲。それなりに実力はあると思われるため、少しだけ遠回りをして行く。
杏寿郎は泰葉を降ろす。
杏「…大丈夫か?」
杏寿郎は震えている訳を早く知りたかった。
場合によっては、すぐにでも対処しなくてはならない。
泰葉は深呼吸しながら自分を落ち着かせ、大丈夫だと頷いた。
杏寿郎は泰葉の肩を抱いた。
杏「彼の事は巻くことができたようだ。もう今日は現れない。」
泰葉の肩に触れる杏寿郎から、暖かさが伝わり震えも無くなった。
「…ありがとうございます。」
そのまましばらく歩き、完全に彼はついて来ていないと確信する。
煉獄家の門をくぐり、杏寿郎が玄関を開けた。
杏「ただいま戻りました!」
その声を聞き付け、急いでやってきたのは千寿郎。
千「兄上、お帰りなさいませ!
泰葉さん!お久しぶりでございます!!」
「お久しぶり。元気そうでなにより!」
泰葉は千寿郎の笑顔を見て、ホッとした。
そして、少し遅れて槇寿郎も顔を出す。
槇「おぉ、来たか。ゆっくりしていきなさい。」
柔らかく微笑む槇寿郎。
もう、酒に溺れていた頃の面影はなく、優しい父の顔をしている。
「ありがとうございます。数週間しか空いていないのに、数ヶ月ぶりにお会いした気分です。」
それほどにこの家が居心地の良い場所という事だ。
その事を汲み取った3人は嬉しそうに微笑んだ。
家に入り、早速泰葉と千寿郎は台所に立つ。
杏寿郎は泰葉に笑顔が戻り、楽しそうに千寿郎と話しているのを見て、肩を撫で下ろした。
そして、自室に入って隊服を脱ぐ。
階級甲
金崎 侑。
あの細い目がいつも笑っているように見える男には、覚えがあった。
一昨日の夜、任務で一緒になった。
鬼はさほど強くなかった。甲の隊士が2人もいたから俺が出るまでもないだろうと組んでいた。
しかし、癸の隊士が一人鬼に捕まり、間一髪のところで俺が鬼の腕を切り落とした。
その癸の隊士を受け止めたのが、金崎だった。
受け止めた時に金崎も倒れた為、背中を打ちつけていた。
俺は確かに背中を確認して、治療を受けるように促した…
が。
毎日のように治療に来るとはどういうことか。