第23章 危険
角を曲がって現れた人物。
11時半に現れる彼だった…。
「あ…!」
『あっ…』
彼は泰葉の姿に驚いた様子だったが、隣に杏寿郎がいたためすぐに頭を下げた。
『鬼殺隊、階級甲、金崎 侑(かなざき たすく)と申します。』
杏「昨晩の任務ではご苦労だったな!背中は大丈夫か?」
『はい、治療も受けましたので。今日は非番のため、用足しをして家に帰る所でございます。』
侑はいつもの笑顔に見える顔で答えた。
杏「そうか!まもなく暗くなる。隊士といえど十分に気をつけるように!」
『お心遣い、ありがとうございます。』
杏「では、失礼する!」
泰葉も頭を下げる。
そうして泰葉と杏寿郎は、侑が来た道と反対方向に曲がって歩き始めた。
しかし、杏寿郎は感じ取っていた。侑は必死に隠していたが、杏寿郎に向けて殺気を飛ばしていたことを。
歩き始めて、杏寿郎が泰葉に視線を向けると、泰葉の腹のあたりで握られた両手がカタカタと震えていた。
杏「泰葉さん、彼は知り合いか?」
泰葉は、前を向いたまま頷いた。
「知り合いというまでには行かないですが、ほぼ毎日治療に来るのです…」
ほぼ毎日…。新米隊士だとしても、それはありえない。
杏寿郎は、後ろに気配を感じていた。
ずっと後ろではあるが、ついてきている。
なぜ付いてくるかを聞いたとしても、たまたま、同じ方向だといえばそれ以上追求できない距離感。
杏「家に着いたら、詳しく教えてくれ。
とりあえず今は彼を巻く。」
そう言うと、泰葉を横抱きにして、走り出した。
瞬く間に姿を消した2人を、侑は追いかけようとしたが、柱には到底追いつかず、諦めた。
侑「くそっ!!」
侑はギリっと下唇を噛んで、近くの塀を蹴った。