第22章 目覚め
し「泰葉さん、自信を持って。
まず、貴方がいなければ煉獄さんは間違いなくこの世に居なかった。
宇髄さんも、目と腕を失ったまま。
炭治郎君達もそうです。私たちは全集中常中という特殊な方法を取得しているけれど、それでも限度がある。」
しのぶが泰葉の腕から注射器を離した。
「…うん。ありがとう。私、出来ることを頑張るね。」
泰葉はニコッとして、腕をしまった。
しのぶは泰葉の顔を見つめる。
しのぶの顔は綺麗だ。泰葉は思わず頬を染める。
「しのぶさん?どうしたの?」
し「もちろん私もですが、皆が泰葉さんに惹かれるのは何かなーと思って。」
「え?」
し「泰葉さんは、きっとその人にとっての必要なものになれるのでしょうね。」
しのぶは微笑んだ。
正直、しのぶがなぜそんなことを言うのか分からなかった。
し「人気者は大変でしょうけど、頑張ってくださいね!」
「うん?人気者かは分からないけど…頑張る!
それじゃ、治療室に行くね。ありがとう。」
し「こちらこそ。」
泰葉は診察室を出て、治療室に向かった。
治療に必要なものを揃えて、隊士達が来るのを待つ。
すると、5分くらいで隊士達はぼちぼちとやってくる。
ここで働き始めて、もう少しで1ヶ月が経つ。
そこで泰葉は気がついた。ほぼ、毎日のように来る隊士がいることを。
彼は決まって11時半にやってくる…。
茶色で長めの髪を一つに結っている。細めの目がいつも笑っているように見え、温厚そうな人だ。
かすり傷や切り傷。捻挫などいつも、治療は必要だが、軽い怪我をしてくる。
最初は来ない日ももちろんあるため、気のせいかと思ったが…
隊士の出席簿なるものを作ったら、彼はダントツで優秀な出席率だろう。
11時半。
そして、今日も…
コンコン。
「どうぞ。」
そう言いながら、彼でないことを祈る。
『こんにちは。今日も手当をお願いします。』
彼だった。
名前は知らない。
名乗りもしないし、泰葉も流石に関わってはいけない気がしていた。
「今日はどうされましたか?」
泰葉は他の隊士と同じことを聞く。
『今日は背中を強く打ってしまいましてね。』