第22章 目覚め
帰宅後、泰葉の心中は穏やかではなかった。
実弥に、杏寿郎のことを好きかと聞かれた時から、正直杏寿郎のことをどう見て良いのか分からなくなっていた。しまいには、先程の炭治郎の言葉。
『煉獄さんは泰葉さんによっぽど会いたかったんですね。』
え?
どういうこと?
杏寿郎さんが…私に会いたかった…?
確かに、善逸くんが私に縋り付いてた時も、隊士が手を握ろうとした時も、間に入ってくれたのは杏寿郎さん。
いつも手を握られてるって言った時には、ムッとした様子だったし…
自惚れてしまいそう。
しかし、泰葉は頭を振った。
自惚れて、浮かれたところで全然違った意味だったらどうするの!
泰葉は傷つくのが怖かった。
今までこんな風に人を好きになった記憶がないから。
自分には恋をする気持ちがあると、思っていなかった。
そして、何よりこのまま想いを募らせ、実らなかった場合は杏寿郎との関係がどうなってしまうのだろうと、不安でならなかった。
もう、口を利いてもらえないのでは…
そもそも関わりすらなくなってしまうのでは…。
そう思うと、この想いをどうして良いのか分からなかった。
「この歳で、こんな悩みを持つと思わなかったなぁ…。」
泰葉は藤の香を焚いて、眠りについた。