第22章 目覚め
杏寿郎が帰り、隊士達も来なくなったのを確認して、片付けを始める。
時刻は15時半。
今から炭治郎の元に行けば少しは話ができるだろう。
泰葉は身支度を整えて、炭治郎の元に向かう。
コンコン
炭「はい」
「炭治郎くん、お休みのところごめんね。」
泰葉が遠慮がちに入ると、炭治郎はムクリと身体を起こした。
炭「泰葉さんはもうお仕事は終わったんですか?」
「うん、もう隊士の皆さんは来ない時間になったから。
炭治郎くんの体調はどう?」
炭治郎は昼間の話を思い出した。
炭「泰葉さん、俺泰葉さんの血をもらったって…」
「あぁ…しのぶさんから聞いた?
私の治癒能力の話。」
炭「はい。こんな不思議なことがあるんですね。
新しい傷は全て消えてます。」
泰葉は困ったように笑った。
「古傷も治してあげられたら良いのにね…。
みんな傷だらけだから…」
隊士の治療をしているから分かる。
皆、沢山の至難を乗り越えてきたであろう傷。
炭「いえ、多分皆さんそこまで重く考えていないと思います。」
泰葉は炭治郎の言葉にキョトンとした。
炭「俺、鬼殺隊に入る前なんて、ちょっとした怪我はあるけど、こんなに深い傷を負ったことなんてありませんでした。
でも、いくつもの戦いを超えて、傷の分だけ鬼を倒したと思うから…
勲章のような…そんな気分です。」
泰葉はその言葉を真剣に聞いていた。
炭「あ…でも、出来るだけ治るものなら治したいですけどね。」
ヘヘッと笑う炭治郎。
「勲章…か。
そういう考え方、素敵だね。」
泰葉はにこりと笑った。
怪我など、できればしたくないだろう。でも、せざるを得ないことが多い。泰葉は複雑な気持ちを噛み締めていた。
炭「…あ、そうだ!
今日の昼間、宇髄さんと煉獄さんが来ていたんですよ!」
「え、宇髄様もいらしてたの?」
泰葉の反応に炭治郎は疑問に思った。
杏寿郎が来ていたことは知っているようだったからだ。
炭「一度泰葉さん、この部屋に来ようとしましたよね?
それで、また戻ってしまったから、お二人は残念そうでしたよ。」
「そう!ここまで来たのに、呼ばれちゃってね。
そうだったのね…宇髄様には悪いことしちゃったな…」