第21章 想い
〜実弥回想〜
包帯をもらいに蝶屋敷に来た。
泰葉は治療室にいるって聞いたが、治療室は無人。
どこに行ったのかと探していたら、台所から甘い匂いがした。
気づかれないように覗いてみると、泰葉と神崎とかいうのが何かを作っているようだった。
でも、俺にはわかる。おはぎだ。
しかし、欲しいとは恥ずかしくて言えない。
諦めるか…と、踵を返した時、
「不死川様?」
と泰葉が、声をかけた。
「どうしました?珍しいですね。」
実「包帯をもらいに来たんだよォ。泰葉がいないから探しにきただけだァ。」
そういうことか…と、頷く泰葉。
「不死川様、おはぎはお好きですか?今出来上がったところなんです。」
泰葉がニッコリ笑う。
蝶屋敷で来ている白いワンピースをふわりとさせて微笑む姿は、どっかの隊士が言ってた『白衣の天使』というのがピッタリだと思った。
実「おぅ、もらおうか。」
実は大好物だが、神崎もいるから言わない。
「では、お茶とお待ちするので縁側でお待ちください。」
おはぎ作りが楽しかったのか、ご機嫌な泰葉。
俺は言われた通り縁側に移動した。
ぼーっと庭を見ていると、泰葉がお茶とおはぎを持ってきた。
「不死川様もぼーっとしたりするんですね。」
意外だったのか、くつくつと笑う。
実「まぁなァ。」
「知ってました?ここの蝶達は、みんな模様が違うのですよ。」
泰葉は見せてくれようとしたのか、縁側から外に出ようとした。
「わ!っとっと!」
その拍子に躓いて転びそうになる。慌てて俺は手を伸ばして泰葉を受け止めた。
「すみません、躓いちゃって…」
焦ったように、体勢を直してパッと離れる。
実「ったく、気をつけろォ。」
俺の顔は今真っ赤になっているだろうな…。
泰葉はそのまま蝶に向けて指を差し出して、2匹の蝶を止めて見せてきた。
「ほら!ちょっとずつ違うでしょ?」
無邪気に笑う泰葉。単純に愛しさを感じた。
実「本当だなァ。そんなの気にしたこともなかったな。」
俺は縁側に座り直し、お茶を啜った。
蝶を逃して泰葉が隣に座る。
実「泰葉は食わねぇのか?」
「私はつまみ食いしすぎてしまって…」