第21章 想い
蔦「義勇はいつも口の周りを賑やかにするんだから…。」
そう言って笑う蔦子が頭に浮かぶ。
目を閉じて、もう一度開くとそこにいるのは泰葉だった。
泰葉は綺麗になりましたよ、とニッコリ笑って座る。
「冨岡様?大丈夫ですか?」
泰葉に声をかけられ我に帰った。
義「あ、あぁ。」
しばらく、他愛のない話をした。泰葉はコロコロ表情を変えながら楽しそうに話す。それに釣られるように義勇も珍しく笑うことができた。
次第に柱の話になった。泰葉は人を見る力が長けているのだと思う。
その人の特徴や本性をよく分かっているように感じる。
泰葉が槇寿朗を改心させたと言っていたが、確かに泰葉なら可能だろうと思った。
義勇は、女性として、姉のような存在としての2つで惹かれていることに気づく。
でも、泰葉は義勇を恋愛対象としては見ていないのだな…とも気づいた。
その理由は、髪飾り。
話をしている途中で、パチンと音がして髪飾りが落ちた。
義勇がそれに気づき拾い上げる。
黄金色の中に泳ぐ金魚。
義「綺麗な飾りだな…。」
そういうと、泰葉はその飾りを握りしめて
「はい。これは煉獄様が贈ってくださいました。綺麗ですよね。」
と、とても嬉しそうに微笑んだ。
その時、泰葉の中にいるのは杏寿郎なのだと分かった義勇。
義勇はこのことに心を痛めるかと思ったが、意外にもすんなり受け入れている自分がいた。
泰葉を、女性として惹かれたことは事実。
迷ったが、義勇はこの気持ちを無かったことにしたくないと思った。
義「泰葉。」
義勇に呼ばれて、首を傾げる泰葉。
義「俺は泰葉が好きだ。」
突然の告白に戸惑う表現の泰葉
「え…それは…」
義「もちろん、1人の女性としてだ。
しかし、泰葉は俺をその対象として見ていないのは分かっている。これは俺の一方的なものだから、気にしないで欲しい。」
「……。」
義「ただ、俺の中でもう一つの理由で泰葉に惹かれている。
俺には姉がいた。蔦子と言う。優しく、面倒見の良い人だった。
泰葉がその姿と重なった。
姉は祝言を翌日に控えて、鬼に殺された。」