第20章 柘榴
杏「それはそうだな。
俺は、自分の気持ちだけを考えたら、もちろん恋仲になりたい。
もし、泰葉さんが他の男のものになるとなど、考えたくもない。」
天「…お前、案外独占欲強いのな。」
杏寿郎は大きく言えば、ハッキリ、さっぱりした性格だと思う。
だから女性に関しても、『誰といたとしても女性の自由だ!自分のところに帰ってきてくれればそれで良い!』などと言っていそうだと思っていたのだ。
杏「…む、そうか?
普通、嫌だろう。自分が想っている女性が他の男に抱かれてもみろ。君は耐えられるのか?」
天「…まぁな。
嫁を任務とはいえ、遊郭に送り込んだ俺はなんともいえねぇが。」
杏「あの時は任務の為、協力してもらえてありがたいと思っていたが…
きみ、すごいな。俺には無理だ。」
杏寿郎は遊郭での事を思い出して、目を丸くした。
天「俺らは忍としての特殊な考えがあるからな。
その点は参考にならねぇかもしれないな。」
でも…と天元が悪い笑みを見せる。
天「煉獄も男だ。
もしもの時は俺が忍としての技を教えてやるからな!」
杏寿郎は目をパチパチさせた。
杏「それは興味深いが、君は恋敵ではないのか?」
そう言われて、天元は困った顔をした。
天「確かに泰葉は魅力的で、俺だって嫁に欲しいところだ。
でも、俺には3人も自慢の嫁がいるからな。
やっと恋を覚えた友から、奪う気はねぇよ。
たが、泰葉を泣かす奴からは容赦なく拐うからな。」
天元の目がグッと杏寿郎の目を捉える。
その目に負けないよう、杏寿郎もグッと見返した。
杏「肝に銘じよう!」
天元は、にっと笑う。
天「そうこなくちゃな!でも、まだ泰葉の気持ちが分からねぇ。珍しく不死川と冨岡、時透までが泰葉を狙っている。
ちらほら隊士たちも狙ってるみてぇだが、治療以外で関わる事もまぁないだろう。
敵はその3人も同然だな。」
杏「そうだな…
悪いが負けるわけにはいかん。泰葉さんに慕って貰えるよう仕掛けていくしかあるまい!」
天元は、こんなに泰葉に夢中になる杏寿郎に驚いた。
心から本気で想っていることが分かり、身を引こうと決めたのだ。
もちろん、天元も本気だったのだが。
天「俺に出来ることは協力してやる。
派手に頑張れや!」