第3章 蝶屋敷
泰葉は腕と脇腹の貼り薬を変えてもらいながら、他愛のない話をした。
しのぶの顔は、いつもよりも柔らかく、気持ちが伴っているものになっていた、
し「あ、そういえば、アオイから退院日を知りたいと聞きましたが…
炎柱の煉獄さんが目覚めるまでもう少し待っていただけますか?
彼が起きたら、泰葉さんの話を話してもらう予定です。」
「そう、炎柱様という方はまだ目覚めないのね。」
そこも心配だったが、泰葉にはお金の心配もあった。
「しのぶさん、私の入院費、大体でいいから教えてもらえませんか?」
目をパチパチするしのぶ。
炎柱様が起きないのを皆んな心配しているのに、私はお金のことを聞くなんて…!
薄情?薄情だと思われたわよね?
泰葉は冷や汗をかく。
し「あはは、その心配ならいりませんよ。
煉獄さんが目覚めてお話をしてくだされば、貴女は鬼殺隊の協力者です。お代は必要ありませんよ。」
「…え?」
し「ここは病院とは違います。入院費などはいただいておりません。」
本来ならば一般人は入らない施設。
また、怪我をした隊士は何度も蝶屋敷に入院したりする。
もし、入院費を取っていたら隊士達は破産してしまうという。
泰葉はなるほど、と納得したのと同時にホッと胸を撫で下ろした。
その様子をくすくす笑いながら見ていたしのぶ。
「泰葉さん、竈門くん達のお部屋に行ってみませんか?」
と、声をかけてくれた。
列車ではすれ違っただけだったが、印象に強く残っていた彼らにもう一度会いたいと思っていた。
泰葉は、嬉しそうに頷いた。
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コンコン
しのぶは、炭治郎達がいる部屋のドアをノックした。
「はい。」
男の子の声が聞こえる。
ドアを開けると、ベッドが間隔を開けて3つ並んでおり、額に痣のある少年、黄色い髪の少年が身体を起こしていた。
伊之助は…元気に床で腕立て伏せをしている。
「失礼します。」
しのぶの後に続いて、部屋に入っていく。
「こ、こんにちは。」
泰葉が挨拶すると、3人が固まった。
伊「お前!思い出したのか⁉︎」
泰葉は首を横に振る。
「ごめんね、まだなの。
貴方達が元気になったのかな?と思って連れてきてもらったんだけど…ダメだったかな?」