第20章 柘榴
泰葉の涙も落ち着き、みんなでゼリーの続きを味わう。
杏「泰葉さんは柘榴が好きなのか?
よもや、だから君の血も柘榴のようなのか?」
杏寿郎の言うことにギョッとする槇寿郎と千寿郎。
槇「…さすがに俺も瑠火の血は舐めた事もないぞ。」
「ち、蝶屋敷で宇髄様の治療をした際に…」
誤解を招かれないように、泰葉が説明をする。
血に味があるのかと、びっくりしたようだが、不思議な力を秘めている血液は違うのかも…と、2人は納得した。
杏「して、泰葉さん。
ずっと気になってたのだが…今日の服装は…」
泰葉は杏寿郎に言われて、ハッと気がついた。
今日は紺色の膝丈のワンピースに、蜜璃から借りたエプロン。
「や、やだ…。
さすがにこのエプロンは可愛すぎますよねっ!
私、千寿郎くんにも褒めてもらったから、浮かれちゃって…。
すみません、今取りますからっ。」
急いで取ろうと後ろで結んだ蝶結びを解こうとする。
しかし、それを杏寿郎が止めた。
杏「いや、とても可憐だと思う!
先日、任務で伺った先にこのような服装の…めいどさんと言ったかな?
家族のお世話をする女性も、このような服装をしていたな…。
主人の事を「旦那様」と呼んでいた。」
「私も、煉獄家ではそのような立場かもしれませんね。
ね?旦那様?」
『ん゛ん゛っ…!』
泰葉は揶揄うように杏寿郎の方を見て言った。
しかし、杏寿郎には刺激が強かったようだ。
遠くを見て動かなくなっている。
千寿郎も顔を真っ赤にして言葉を失っている。
槇「ゴホン。
…泰葉さん、うちは女子の免疫が乏しい。
あまり揶揄わないでやってくれ。
それから、これから外に出る時は、そのエプロンは外しなさい。」
槇寿郎も頬を少々赤くしながら、苦笑した。
そう言われて、泰葉は慌てる。
「す、すみませんっ。
ちょっと揶揄いすぎましたね。
はい、必ず外していきます。」
そんな穏やかな時間を過ごし、
暖かな午後のひと時だった。