第19章 行き違い
杏寿郎の頭の中は真っ白だった。
蝶屋敷に行ってもいない。
甘露寺邸に行ったら帰ってしまった。
もう、会うなと言われているかのようだ。
完全に行き違い状態。
杏「よ、よもや…」
蜜「れ、煉獄さん⁉︎
聞こえていますか?早くお家に…」
杏「あ、あぁ!
分かった。今日は帰るとしよう!
突然訪ねて悪かったな。
では!」
溌剌と挨拶して行くが、背中があからさまに残念そうだ。
蜜璃はなんだか気の毒に思った。
蜜「煉獄さん、頑張ってくださいね!
何かあればお話聞きますからっ!」
杏寿郎は、振り返り軽く手を上げて去っていった。
蜜「はぁ、恋ってもどかしいわぁ〜!」
蜜璃は杏寿郎の後ろ姿をみて、悶えていた。
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一方で、泰葉は煉獄家についた所である。
「ごめんください。
泰葉です。こんにちわ!」
千寿郎が出迎える。
千「わぁ!泰葉さん、その格好は⁉︎」
泰葉は蜜璃の家から急いで来たので、エプロンを付けたまま来てしまっていた。
「あ…やだ、恥ずかしい!蜜璃ちゃんのエプロンそのままで来ちゃった…」
千「いえ、とてもお似合いですよ。
今日は洋装なので、割烹着よりこちらの方が良いと思います。」
千寿郎は、少しもじもじしながら褒めてくれた。
「ありがとう。
それより、杏寿郎さんは?
具合が悪いの?」
泰葉が心配そうな表情をすると、千寿郎はしまった…という顔をした。
もちろん、杏寿郎の体調は悪くない。
仕事もきっちりこなしている。
しかし、仕事以外の杏寿郎にどうも覇気がない。
ぼーっとしているような事も多くなった。
千寿郎が泰葉に教えてもらった通りに常備菜を作るが、おかわりの回数が違うのだ。
これは…
と、気の毒に思った槇寿朗と千寿郎は泰葉に来てもらおうと泰葉に手紙を書いたのだ。
ただ、会いに来て欲しいと書けば良かったのだが、男所帯。
千寿郎でさえも、そんなにストレートに言うのは恥ずかしかった。
なので、嘘をついているわけではないが、
様子がおかしい…というのは口実である。