第19章 行き違い
蜜璃の屋敷から一番近い商店街で買い物をする。
蜜璃はいつも大量の食材を買っているらしく、商店の人から声がかかる。
『蜜璃ちゃーん、こっちの野菜も見ていっておくれ!』
『新鮮な魚が入ってるよー!』
その言葉に丁寧に返していく蜜璃。
蜜「ごめんなさい、今日はお魚じゃなくてお菓子作りの材料を探しているの!」
毎日あの量を食べているとすると、すぐにお得意様になるだろうなと思いながらついて行く。
さつまいも、砂糖、小麦粉、牛乳にバター…
色々買い揃えた。
泰葉も両手に荷物を持って入るが、蜜璃の手にも大量の荷物。
本当に、今からこの材料を捌けるのだろうか?と、心配になりながら蜜璃の家へと向かった。
少し歩くと、大きなお屋敷が見えてきた。
やはり柱の屋敷。
蜜「おいでませ!我が家へ!」
蜜璃が玄関を開けてくれた。
煉獄家や、蝶屋敷とはちょっと違い、西洋の文化も取り入れられた内装だった。
何とも蜜璃らしい、かわいいお家だ。
「わぁー!すごい!
お洒落なのね!」
泰葉にそう言われて、嬉しそうな蜜璃。
蜜「早速作りましょうか!
あ、その前に着替えて来るね!」
そう言って、隣の部屋へと入っていった。
1人になった泰葉は部屋を見回す。
テーブルに椅子が置いてある居間…リビングというそう。
時計もお洒落だ。
女の子1人で住むと、普通はこうだよなぁ…。
と思った。
そして、自分の部屋の女っ気のなさに落ち込んだ。
お金が貯まったら、何かお洒落なものを買おうか…。
そう思いながら、台所に行き、手を洗った。
手を拭いていると、蜜璃が部屋から出てきた。
蜜璃もワンピースを着ている。
…かわいい!
お人形のようだ!!
「蜜璃ちゃん、かわいい!
ワンピースもよく似合ってるわ!」
そう言われて、顔を赤らめる蜜璃。
そして、その手には白い布が握られていた。
「蜜璃ちゃん、それなぁに?」
泰葉が聞くと、蜜璃は嬉しそうにその布を広げた。
蜜「じゃーん!エプロンですっ!
今日はこれをつけてお料理しましょう!」
広げられた布は、フリルのついたかわいいエプロンだった。
最近街で流行りのパーラーでウェートレスさんが付けているようなエプロン。
蜜璃がつけたらさぞ可愛いだろう。