第3章 蝶屋敷
夕方、他の病室が落ち着いたようで、泰葉の病室にアオイが入ってきた。
ア「昼間はごめんなさい、騒がしくて。」
「ううん、大丈夫。伊之助君…だっけ?彼は今日起きたのよね?
それであの元気…すごいわ。」
ア「あの3人はいつも無茶をしすぎなんです!ここに来られる時には、いっつも重症!毎回どれだけ心配しているか!」
あらあら?
アオイちゃん…もしかして…
「アオイちゃんは、3人と仲良しなのね?」
ア「べ、別に仲良しじゃありませんっ!ただ、あの人達がここに来ると、長期間いるのでっ!」
ふふ、かわいい可愛い。
含んだ笑みを浮かべていると、アオイは顔を真っ赤にしてしまった。
「あ、そういえば…
アオイちゃん、私の退院の日って分かったりする?」
ア「いいえ。私は今はわからない。しのぶ様に聞いておくわね。」
でも…とアオイは眉を下げる。
「泰葉さんが退院したら、寂しいな…」
きゅぅん…
泰葉はアオイを抱きしめた。
ーーーーーーーーーーーー
次の日の朝…
また蝶屋敷は朝からバタバタとしていた。
炭治郎が目を覚ましたのだ。
「…もう1人の少年が目を覚ましたのかな?」
泰葉は心配そうに窓の外を見る。
廊下をパタパタ走るアオイとカナヲの姿が見えた。
カナヲの目には涙が浮かんでいるようだった。
しかし悲しそうではなくて
「嬉しそう」
そうか、カナヲちゃんの好きな人は、今起きた少年なのね。
微笑ましく思いながら1人微笑んだ。
いいなぁ、恋か…
いつからしていないのかな…
したこと…あるのかな?
泰葉は、人の恋愛には敏感であったが、自分の事にはとても鈍かった。
泰葉は病室の窓を開けた。
ふわっと風が入ってくる。
それと一緒に蝶が一匹入ってきた。
「あらあら、可愛い蝶が来てくれたのね。」
指を出してみると、ちょんっと止まった。
泰葉はそんな可愛らしい蝶に柔らかく微笑んだ。
ガシャン!!
金属のものが落ちる音がした。
ビクッとした泰葉は、音のした入口を見る。
蝶も、驚いたように外へと飛び立った。
そこに立っていたのは、しのぶだった。
しのぶは口元を押さえて震えているようだった。
泰葉は慌ててしのぶのところへ駆け寄る。
「しのぶさん⁉︎どうしました?」