第18章 恋情
しばらくして、一際大きな家が見えてきた。
家の前には沢山の大人達がいる。
女の子「あれがお家!」
自宅が見えて心から安心したのだろう。
声が少し明るくなった。
杏「よし、ここからは歩けるか?
俺はここでお別れしよう。
これからも頑張って生きていくんだぞ!」
女の子は少し残念そうな顔をした。
女の子「うん、分かった…。
ありがとう、お日様のお兄ちゃん。
今度金魚さんも連れてきてね!」
そう言って、女の子は自分の家に駆けていった。
少し進んだ先で振り返り、手を振っている。
杏寿郎は手を振りかえし、女の子が家に着いたのを見届ける。
大人たちが彼女を囲んで抱きしめあっている。
杏「子を心配しない親などいない…な。」
杏寿郎は微笑んで、街を後にした。
しばらく歩いて腹が減った事に気づく。
負傷者もいると聞いて、急いだため途中で食事を挟まなかった。
杏寿郎は、座れるような岩を見つけ、そこに腰掛ける。
竹の葉で包まれた握り飯を手に取り、頬張った。
いつも千寿郎は、杏寿郎を気遣いどんな時間でも食事を用意してくれる。
いつもは鮭や梅などの具を入れてくれる。
杏寿郎はその中を何かと思いながら食べるのが好きだった。
何より、暗い中で食べるので正直何が入っているかが、見えない。
しかし、今日の具材はいつもと違っていた。
とても美味しいが、鮭や梅ではない…。
そして杏寿郎は気づいた。
杏(これは泰葉さんの作った、さつまいものきんぴらだ!)
杏寿郎は頬を綻ばせ
杏「わっしょい!うまい!!」
と叫んだ。
暗闇に杏寿郎の声が響く。
さつまいものきんぴらは、さつまいもと人参が千切りになって炒められている。
日持ちがするように少し味が濃いめに付いているので、白飯にとても合うのだ。
杏「こんな場所で泰葉さんの味を味わえるなんてな!」
千寿郎の具材のチョイスに感謝した。
杏「うまい!」
『…あ!やっぱり煉獄さんだ!』
杏寿郎の後ろの茂みからガサガサっと音がする。
杏「む!この声は…甘露寺か!」
茂みからひょっこり顔を出したのは、蜜璃だった。