第18章 恋情
ズシャァッと音を立てて頸が飛ぶ。
ほぼ同じころ、分身2体の首も飛んだ。
『おの…れ、許…さん…ぞ…』
鬼は恨言を残しながら消えていった。
杏「子供たちの未来を奪うとは…」
杏寿郎は、鬼に喰われたであろう子供たちの残骸に手を合わせた。
すると、そばの木の影からガサガサっと音がした。
杏寿郎は警戒しながら覗いてみると、
1人の女の子が蹲っていた。
千寿郎くらいだろうか…
杏「大丈夫かい?」
杏寿郎は驚かさないように、優しく声をかける。
女の子は、鬼ではないと思ったらしく、そっと顔を上げた。
目は怯えて、震えている。
杏「お家はわかるかい?
分かるなら、俺が背負って家に送ろう。
大丈夫、鬼はやっつけた。」
鬼はやっつけた
という言葉に安心したのか、女の子は大きな声を出して泣いた。
数名の隊士が気づいて、杏寿郎と代わろうとしたが、杏寿郎はそれを断った。
杏「この子は俺が送ってくる。
君たちは負傷した隊士を蝶屋敷へと運んでやってくれ。
頑張ったな。」
隊士に労いの言葉をかけて、女の子に手を差し出した。
女の子はグズグズと涙を拭いながら、杏寿郎の手を取り立ち上がった。
杏「さ、抱き上げるのと、背負うのはどちらがいいかな?」
にっこり微笑みながら問いかけると、女の子はちょっと照れながら、「抱っこがいい」と答えた。
杏「承知した!
では、少女。家までの案内はよろしく頼んだぞ!
それでは、俺はこれで失礼する!
君たちもゆっくり身体を休めるように!」
そう言って杏寿郎は少女を抱き抱え、羽織を揺らしながら少女の家へと歩いていった。
それを見送る隊士達。
「なぁ、炎柱様っていつも優しいけど、今日は特別優しくなかったか?おれ、肩にポンってされちゃった…」
『私も抱き上げるのと背負うのどちらがいいか、聞かれてみたい…』
「あぁ…俺なら…背負ってもらいたいかな…
あの広い背中を感じたい。」
『私は抱っこして欲しい…あの端正なお顔を近くで拝見したい…』
隊士達は、ぽーっした気持ちになりながら、蝶屋敷に向かっていった。