第18章 恋情
杏寿郎が目を覚ましたのはその30分後。
杏「ん…?」
目線の先には自宅の中庭。
頭は座布団に置かれている。
杏(泰葉さんに抱きしめられていたはず…。)
しかし、泰葉の姿はない。
ムクリと体を起こすと、午後の日差しが注がれていた。
すると、パタパタと廊下を走る音がする。
杏「泰葉さん…か?」
と思ったら、千寿郎だった。
千「…お目覚めになりましたか?
泰葉さんは先程帰られてしまいました。
帰らないと、夜に間に合わなくなってしまいますから…。」
千寿郎が申し訳なさそうに説明した。
杏「そうか。
俺はずっとこうして眠っていたのか?」
そう聞くと、千寿郎は頬を赤くして気まずそうにしている。
千「あ、えと…その…」
すると、杏寿郎の後ろから槇寿郎が口を開く。
槇「泰葉さんの膝で気持ちよさそうに眠っていたぞ。」
槇寿郎は若干ニヤついている。
杏寿郎は驚いた。
泰葉に、抱きしめられて
膝枕で寝ていた…⁉︎
というか、抱きしめられて自分の気持ちに気づいてからの記憶がない。
まさか、抱きしめられて眠ったのだろうか…
杏「それは本当ですか!!
よもやよもやだ!穴があったら、入りたい!!」
そう言って笑うしかなかった。
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その夕方。
カァー
要がやってきた。
「レンゴク キョウジュロー 南南西 南南西
ヨルニ コドモガ攫ワレテイル トノ 情報アリ」
杏「む!南南西だな!
ありがとう要!!」
杏寿郎は、要に声をかけるとカァーと鳴いてまた飛んでいった。
千「任務ですか?」
杏「あぁ、子供が攫われているそうだ…。」
杏寿郎の顔つきが変わる。
杏寿郎は、急いで自室へ向かった。
隊服に身を包み、炎柱の羽織を纏う。
その間に千寿郎はお握りを用意する。
槇「子供を狙うとは…
これ以上犠牲が出ないと良いな。
杏寿郎、気をつけろよ。」
杏「はい、肝に銘じます!」
千「兄上、お握りです。
途中で召し上がってください。
…ご武運を。」
杏「いつもありがとう。
では、行って参ります!」
そう言って、杏寿郎は走り出した。