第18章 恋情
千寿郎の目には
泰葉の膝枕で無防備に眠る兄の姿。
いくら杏寿郎が非番だとしても、
こんなに安心しきって眠る姿を見たことがなかった。
しかし、なぜ膝枕で?
どういう展開なのだろうか?
千寿郎がぐるぐる考えていると、
泰葉が、ちょいちょいと手招きしている。
千寿郎は静かに泰葉たちの元へ寄る。
「杏寿郎さん、ちょっとお疲れみたいなの。
もう少ししたら、お部屋へ連れて行きたいのだけど、手伝ってくれる?」
泰葉は小声で千寿郎に頼む。
千「わ、分かりました。
でも、どうしてこのように?」
泰葉は少し困った。
この状況をどう伝えれば良いのか…。
悩んでいると、千寿郎は兄の異変に気づく。
杏寿郎の目元が赤い。
それが泣いたからだというのも分かった。
正直驚いた。
どういう理由かは知らないが、
常に強い兄が弱いところを見せることができたのだろう。
いつでも頼れる兄。
今まで甘えることなどしなかった。
それが今できているのだと思うと、千寿郎は嬉しくなった。
千「泰葉さん、ありがとうございます。」
泰葉はなぜお礼を言われたのか、分からなかったが
穏やかな千寿郎の表情をみて、微笑んだ。
しばらくして2人で運ぼうと思ったが、なかなか難しかった。
どうしようかと思っていると、今度は槇寿郎が帰ってきた。
杏寿郎の姿にギョッとする槇寿郎。
泰葉達が、移動させたいと説明すると
槇「それでは流石に起きてしまうだろうから、座布団に頭を乗せてそのまま寝かせてやりなさい。」
と、いうことだった。
泰葉は気持ちよさそうに眠っている杏寿郎には申し訳なかったが、太ももからそっと降ろして、座布団に頭を置いた。
薄手の布団をかけてやり、寒くないようにしてあげた。
その後、泰葉と千寿郎は常備菜を無事に作り終え、
泰葉は杏寿郎が気になるところではあったが、蝶屋敷などでまた会えるだろうと、帰ることにした。