第17章 気持ち
杏寿郎は、皆の言葉に丁寧に答える泰葉に感心はした。
しかし、抱きつかれるのにも応え、食事の誘いにも応え…。
それを嫌だと思ってしまった。
目の前で他の男に抱きしめられ、
後日に他の男と食事に行く。
いつもなら仲が良くて何より!
なんて思っているはずなのに。
杏寿郎の中に何か黒いような感情。
これが嫉妬だと、まだ本人は気づいていない。
泰葉は杏寿郎を見つめている。
杏寿郎の言ったことは、どういう事だろうかと考えているのだろう。
杏「いや、忘れてくれ。
さぁ、俺たちも行こう。」
杏寿郎が微笑み、歩き出したので
泰葉もそれについて行く。
(なんだか…様子がおかしいな…)
と、思いながら。
ーーーーーーー
しばらくして、煉獄家の門が見えてきた。
千寿郎が、掃き掃除をしている。
こちらに気づいたのか、手を振ってくれた。
泰葉は嬉しくなって、手をふり返す。
すると、千寿郎はこちらに駆けてきた。
千「お帰りなさいませ!兄上と泰葉さん!
歓迎会は楽しめましたか?」
「ええ!とても楽しかったわ!」
泰葉と千寿郎は手を取り合ってキャッキャっと楽しそうだ。
千寿郎は、いつまでも黙って2人を見ている兄に違和感を感じる。
千「兄上?…どうかされましたか?」
千寿郎の言葉に、ハッとして
杏寿郎はにこりと笑った。
杏「楽しかったぞ!
さ、中に入ろう!
泰葉さんも、沢山歩いて疲れただろう!」
そう言って、門をくぐって行った。
千「兄上…何があったのでしょうか?」
「それが、今日の朝から変なの。
笑ってはくれるんだけど…」
2人は首を傾げながら後をついて行く。
その後、槇寿郎にも挨拶をして、居間にてお茶を啜る。
槇「お館様は、変わりなかったか?」
杏寿郎は顔を顰めた。
杏「悪化が…進行しておりました。
おそらくですが、余命も僅かなのではないかと」
槇「…そうか。」
2人の表情に、事の深刻さが伝わってくる。
泰葉と千寿郎も黙って聞いていた。
すると、槇寿郎は泰葉の顔を見た。
槇「泰葉さんは、どうすることにしたんだ?」
槇寿郎の顔からは心配の色が伺える。