第3章 蝶屋敷
な・す・き(可愛いって無自覚なんだ!)
「3人は、好きな人とかいないの?」
な・す・き「いないですぅー」
「そうなのね、でもいつかできたら皆で話すことが楽しくなって良いわね。」
3人が恋話で盛り上がっていたら可愛いだろう。
「カナヲちゃん、カナヲちゃんは?好きな人…いる?」
カナヲはあまり多くのことは話さない。しかし、最近はこうして部屋に来てくれるようになったから、嫌々では無いと思う。
会話の種にでもと思って聞いたけど…
お年頃の女の子には聞いちゃいけなかったかな?
そう思っていると、カナヲの顔が真っ赤になっていた。
あら?これは…いるのね。
分かりやすくて可愛いけど、自分から話してくれるのを待つとしよう。
きよ「泰葉さんは緋色がお好きなんですか?」
気を回したのか、きよが質問を変えた。
なんて出来た子!
「緋色?どうして?」
だって…と、ベッドのサイドテーブルに置いた緋色の髪留めを指差す。
「あぁ、これはね、私のお母さんがくれたのよ」
そう話していると、ふと駅で会った青年を思い出した。
あの青年の瞳も緋色だったな…
「そうそう、緋色といえば列車に乗る前にね…」
泰葉は売店での出来事を話した。
金色の髪に緋色の毛先、瞳も緋色から金色に変わっていく綺麗で不思議な大きな目。
独り言も大きくて、お弁当を買い占めてしまったこと。
そして自分の分も払ってくれたこと。
「どこの学生だったのかな?」
ちょっと変わった面白い人、というつもりで話したのだけれど…
あれ?
皆んながなんだか困った顔してる…?
悪口を言った覚えはないけど…
すみ「あ、あのー…その方は多分…」
そう言いかけた時、
バンっとドアが開き、慌てたアオイが入ってきた。
ア「カナヲ、善逸さんと伊之助さんが起きたの。
私だけじゃ手に負えないから、手を貸してちょうだい!
すみはしのぶ様を呼んできて!
きよと、なほは桶にお湯を入れてガーゼも持ってきて!」
一気に慌ただしくなる室内。
皆、「失礼します」
と、泰葉に頭を下げて部屋を出て行った。
「いってらっしゃい。」
泰葉の声は届いたかは分からない。
私と列車に乗っていた隊士の事だったのだろう。
手に負えない…
どんな人なのかな?
しかし、皆んな若いのに働き者だなぁ。
と、感心した。