第16章 歓迎会
無一郎は上目遣いをして泰葉を見る。
無「無一郎。
俺の名前は、無一郎だよ。
時透様とか、よそよそしい呼び方…やめてよ。」
きゅーん…
無一郎は、男らしいというより、中性的な顔立ちだと思う。
そんな可愛らしい子にそんな風に言われたら。
「む、無一郎さん?」
無「やだ。」
「無一郎くん?」
無「…。」
きっともう一声!という感じなのだろう。
しかし、いくら10以上の歳の差があろうが、柱は柱。
呼び捨てになどできない。
「無一郎くんで…許してもらえませんか?」
困って、そう尋ねる。
無一郎は少し不満そうだったが、頷いてくれた。
無「それでいいよ。
でも、敬語はやめてね。
俺は泰葉と仲良くなりたいんだ。」
そんな会話をしていると、しのぶが不思議そうに無一郎を見る。
し「時透くん、泰葉さんの名前…よく忘れませんでしたね?」
泰葉がどういう事かと、疑問に思っているとしのぶが説明してくれた。
し「時透くんは、記憶がすぐに消えてしまうのですよ。
だから、基本的に人の名前など覚えていないんです。」
泰葉は驚いて無一郎を見る。
「何かあったらお手伝いするからね!」
泰葉がそういうと、無一郎は驚いていた。
無「可哀想とか…言われるのかと思った。」
「確かに、私も昔の記憶が無かったりするから、心細いんじゃないかなぁ…とは思うけど。
でも、他人から可哀想って思われた時点で記憶が戻るわけでもないしね。
前を見て生きていくしかないから…
だから、この先で何かあったら手伝うよってこと。」
無(なんだろう…前向きに人の心配する人…今までいたのかな?
胸のあたりが暖かくなる。)
グイッ
無一郎は泰葉を抱きしめる。
座っているから、そこまで身長差はないが
泰葉より上背があるため、泰葉は胸元にぽすっと収まった。
周りの者は固まった。
蜜「む、無一郎くん?
どうしちゃったの?」
無「俺…泰葉のことが好き。」
全「!!!!!!!!」