第15章 柱
し「最近は怪我人も減って、蝶屋敷にいるのは竈門炭治郎くん達だけなの。
まだ目が覚めなくてね。
主にアオイと、カナヲが見てくれているわ。
2人とも彼らが心配なのよ。」
それには泰葉も気づいていた。
「彼女たちの想いが実ると良いなぁ。」
その一言にしのぶが反応する。
し「やっぱり、分かります?
泰葉さんは、人の気持ちにはいち早く気づくことができるのね。」
やはり、何かを含んでいる。
「こう見えて、敏感なんですからね!」
胸を張る泰葉に、眉を下げて微笑むしのぶ。
(その敏感さ、自分へ向けられているものにも発揮されたらいいんだけど…)
しのぶは診察室へ泰葉を案内する。
泰葉はしのぶと向かい合うように座る。
し「では、まず採血から行います。」
ここでは、友達ではなく先生と患者のような関係。
しのぶの口調は以前に戻っていた。
泰葉は腕を出す。
しのぶが採血用の注射器を取り出し、血を抜いた。
見た目は普通の人間と変わらぬ血。
この血液の中に何が含まれているというのか。
し「次に、涙と唾液も採取したいと思います。
ただ、涙はすぐに出てこないと思うので、後からにします。」
泰葉は指示された容器に唾液を溜める。
しのぶはそれを確認すると、気になっていた事を聞く。
し「泰葉さんの治癒能力は、例えば失った手とかも治せるのでしょうか?」
泰葉は考えた。
それは試したことがない。
杏寿郎の脇腹と、潰れた目は、無くなったわけではない。
治癒も、その形を元に戻した、と言った方が正しい。
「やったことがないから…
誰か、それで困ってる方がいれば試せるのだけど。」
し「それなら、ちょうどいい方がいらっしゃいます。
今度、戻せるとしたら戻したいか、聞いてみましょう。」
泰葉はそれが天元だと思っていなかった。
泰葉の検査は一通り終わった。
しのぶは成分などを調べる為、作業室へと入る。
泰葉は時間ができたので、3人娘のところへと向かった。