第14章 お館様
杏寿郎は手紙を取り出し、声に出して読み始めた。
そこには先日、煉獄家で話された西ノ宮家の2つの能力について、書かれていた。
粗方、戦闘能力について知っていた耀哉は、表情を変えず天井の方を見ている。
杏「この治癒能力については
侵してはいけない3つの掟
寿命の者の延命
死者の蘇生
命に関わる病気の治癒
この事を5回行った者は寿命が半分に削られるとされている。
また、この治癒能力は他人にのみ働き、本人には発揮されない。
一族の者を治癒できる方法は、一つ。
適合者に流れる体液を服用することのみ。
また、泰葉の適合者は、未だ不明。
…以上です。」
耀哉は杏寿郎の方に顔を向け、「ありがとう」と言った。
そして、しばらく考えるように目を瞑る。
耀「泰葉。」
耀哉が泰葉の方に顔を向ける。
「はい。」
耀「君は、自分の力を知って、どう生きていきたいと思っているかな?」
泰葉は悩んだ。
今まで通り、この能力を知らなかった時のように、平和に暮らしていきたい。
しかし今、鬼の存在を知り、鬼を滅する者たちがいて、自分には戦闘能力に加え、治癒能力もある。
それを活かさずのうのうと生きていて良いのだろうか。
耀「私はね、この力は使わないでいいと思っているよ。」
耀哉の言葉は意外なものだった。
鬼殺隊に有利になるであろう、この存在を利用せず、そのまま生きていいと言っているのだ。
耀「戦闘能力も、治癒能力も…君たち一族のもの。
私たちが、利用していい…ものではない。
正直なところ、鬼殺隊としては…魅力的な能力だ。
今の柱達は今までにない、精鋭が揃っていると…思っている。
だから、この子たちが、治癒を手に入れられたら…
鬼を滅する…ことが可能だと思う。」
耀哉はゴホッと咳をする。
耀「でも、それは…泰葉の力でしかない。
君が、この道を…選んだら、危険と隣り合わせになる。
できれば、君には…幸せに生きてほしい。」
耀哉の言葉は、矛盾しているようにも感じるが、本音であって心から泰葉の事を思ってくれているのが分かる。
自分はどうしたいのか。
泰葉は真っ直ぐ耀哉を見た。
「私は…
できることなら、今まで通り平凡な日常を送りたいと思います。」