第14章 お館様
耀哉の娘、にちかだ。
杏寿郎は泰葉に目配せをして、ついてくるよう促した。
泰葉は頷いて、ついて行く。
煉獄家も、蝶屋敷もとても広い。
しかし、ここは比にならない程広かった。
にちかに案内され、2人はある部屋の前まできた。
以前、杏寿郎が話をした時とは別の部屋。
どうやら和室のようだ。
にちかは膝をつき、襖の前から声をかける。
「煉獄杏寿郎様と、西ノ宮泰葉様をお連れしました。」
杏寿郎と泰葉も正座をして、中からの反応を待つ。
「どうぞ。」
耀哉の声がすると思っていたが、中からは女性の声がした。
にちかが襖を開けると。
部屋の真ん中に布団が一組敷かれており、そこに男性が寝ている。
その隣には、白髪で美しい女性が座っていた。
「煉獄様、西ノ宮様、どうぞこちらへ。」
2人は布団の横に用意された座布団へ促される。
「「失礼します」」
2人は同時に頭を下げ、まずは杏寿郎が入室した。
泰葉が後に続く。
「よく…きてくれたね。
ごめんよ、体調が…優れなくてね。」
布団に寝た男性が2人に顔を向ける。
鬼殺隊当主 産屋敷耀哉だった。
隣にいる女性は、妻のあまね。
顔はほぼ全体と言っていい程、痣が広がっており、首元や腕にも痣が出ている。
杏寿郎は顔を顰めた。
杏「お館様…いつからこのように…。」
あ「最近は進行が早まり、ここ数日でこのように。」
凛とした鈴の音のような声だ。
耀哉は泰葉の方を見る。
耀「君が泰葉だね。
杏寿郎や、天元達を…助けてくれてありがとう。」
泰葉は三つ指をついて頭を下げる。
「いえ、私は大層なことをしたと思っておりません。
私の方が助けられている身でございます。」
あ「隊士からも泰葉様の戦いぶりは聞いております。
この度は、詳しくお話をお聞きしたく、足を運んでいただきました。
お話をしていただけますか?」
あまねが耀哉の代わりに話す。
耀「聞くのは、今まで通り…できるから。
気にしないで、分かる事を話しておくれ。」
杏「その件に関しまして、泰葉さんの育ての父である智幸殿から手紙を預かっている故、代読させていただいてもよろしいでしょうか?」
あ「お願い致します。」