第14章 お館様
そして、泰葉は杏寿郎にどうしても頼まなくてはならないと、出発される前に口を開く。
「き、杏寿郎さん。」
杏「どうした?」
「あ…あの…、あまり激しく(走って揺さぶったり)しないでください…。」
そう言っている泰葉は、自分の選んだ着物を身に纏い、紅をさした唇は少し濡れている。
そんな彼女が目隠しをして、杏寿郎の顔を見るようにこちらを向いている。
これは…些かいけない事をしている気がしてきた。
自分の身体が熱くなっていくのを感じる。
杏「ん゛…!
うむ!善処しよう!何かあったら知らせてくれ!」
杏寿郎は自分でもそんな事を思うのだと少し驚いた。
気を取り直し、「では、行くぞ」と声をかけて、杏寿郎は鬼殺隊本部へと駆け出した。
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杏寿郎や、柱の身体能力は鬼殺隊の中でも桁が違う。
人間とは思えない速さで、ありえない距離を移動することができる。
中でも、杏寿郎は体力については柱の中でも群を抜いていた。
流石に悲鳴嶼には敵わないが。
ビュンビュンと景色を移らせながら移動していく。
泰葉は見えないものの、それを肌で感じている。
杏寿郎の息遣いは感じるが、息を切らす様子はない。
つくづく次元が違うと感じる。
しばらくすると、杏寿郎はザザッと立ち止まった。
泰葉は杏寿郎の胸元に押しつけられる。
「うぷっ」
杏「む、すまない!大丈夫だろうか!」
泰葉は頷く。
すると、杏寿郎は静かに泰葉を降ろし、目隠しを外した。
久しぶりの光に泰葉は少しクラっとした。
杏「目が眩むだろう。ゆっくりでいい、目が慣れるまで捕まるといい。」
杏寿郎は自分の腕に捕まらせる。
本当に杏寿郎の気遣いが感じられて、感心してしまう。
「ありがとうございます。
杏寿郎さんは優しいですね。」
泰葉にそう言われ、杏寿郎が少し照れていると
2人の前に少女が現れた。
『お待ちしておりました。
こちらへどうぞ。』