第14章 お館様
泰葉には、もちろん誰がどれを選んだかは話していない。
杏「よもや、正解だ!
俺の選んだ着物が分かるとは!」
はっはっはっと笑う杏寿郎。
千「今日は兄上のお着物でしたか…
今度は僕のも着てくださいね!」
泰葉はニコッと笑って頷く。
槇「さ、そろそろ行かないと間に合わんぞ。
杏寿郎、泰葉さんをしっかりお守りしろよ。
…それと、お館様にはよろしく伝えてくれ。」
槇寿郎は柱を引退したが、引退というよりも勝手に行かなくなった…と言っていいものだった。
お館様ともそれ以来会っていない。
杏「分かりました!
では、行ってまいります!」
「行ってまいります。」
杏寿郎と泰葉は頭を下げて、門を出た。
千「行ってらっしゃいませー!」
千寿郎が、大きな声で見送ると、2人は振り返り笑顔で手を振った。
千寿郎はホクホクした表情で父を見た。
槇「どうした?」
自分をニコニコしながら見てくる千寿郎。
千「僕、兄上と泰葉さんが大好きです!!」
急な宣言に驚いた槇寿郎だったが、目を細めて千寿郎の頭をくしゃっと撫でた。
槇「あぁ、そうだな」
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