第14章 お館様
夕飯を終えて、花枝と泰葉は一緒に風呂に入っていた。
親子水入らず。
こうして一緒に入るのはいつぶりだろうか…。
花「泰葉、本当の貴女の力を聞いた時、どう思った?」
突然花枝が質問してきた。
「…話を聞く前に戦闘能力については勘付いてた。
自分の中から沸々と湧いてきていたの。
でも、流石に治癒力があるまでは分からなかったわ。
杏寿郎さんのことも治してたって言うし…。」
そう話していると、
ふと、吉原での戦いの際、自分が傷を負った事を思い出す。
自分の胸元、太ももを見るが跡もない。
そして、目を覚ました時、杏寿郎が自分の胸元に手をかけていた事を思い出す。
もしかしたら…杏寿郎は傷が消えた事を知っていた…?
いや、まさか。
そもそも適合者でないといけないと言っていたし…
泰葉がぐるぐる考えていると、花枝が『泰葉?』と声をかけた。
「ううん、何でもない。あの話を思い出していただけ。」
ふぅん、と納得する花枝。
花「…で?泰葉は、杏寿郎さんのことどう思う?」
いきなり別次元の質問だ。
花枝はいつもそういうところがある。
「そうやって唐突に質問するの、悪い癖だと思うわ!」
泰葉は花枝が自分を揶揄っているのだと思っていた。
しかし、今の花枝は真剣な表情。
「…杏寿郎さんは、立派な方だと思うわ。
自分の意志をしっかり持っていらっしゃるし、強くて優しい。」
泰葉は花枝がその先の答えを欲しているのは分かっていた。
「でもね、お母さん。杏寿郎さんは20歳だと言っていたわ。
私は25歳だもの。姉弟のように見られてるに違いないし。
それに、由緒正しき煉獄家の御長男よ。
私たちが心配しなくても、素敵なお嫁さんがいらっしゃるわ。」
泰葉は、不思議な力を持ち合わせたから、杏寿郎に会っただけ。
それがなければ、こうしている事は無かっただろう。
そう思っていたのだ。
花枝はため息をつく。
花「この、石頭。」
「誰かさんに育てられたもので。」
血は繋がっていないが、一緒に暮らせば似てくるのだろう。
花枝も相当な石頭であった。
だからこそ、娘として育てた泰葉には目の前にある幸せを掴んで欲しいと思った。